研究課題/領域番号 |
24730257
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大野 敦 立命館大学, 経済学部, 准教授 (20432726)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 貿易 / 開発 / WTO / タイ:ラオス:カンボジア:ベトナム / Aid for Trade / メコン川 |
研究概要 |
本年度は、メコン川流域での現地調査、2回の学会出張を実施した。特に3月に行ったカンボジア・タイを中心としたフィールド調査では、農村調査を実施し、現地の情報をデータ化する作業を行なっている。本年度の当初の研究計画は、以下のとおりであった。 国際機関によって計画されている開発政策を概観する。特に、Aid for Tradeを視野に入れ、世界銀行・IMF・WTO・UNCTADといった貿易と開発に直接・間接に関わる機関の政策の変容および背後にある経済理論への考察を行う。これらは主に文献調査を主とし、これまでの政策と計画を俯瞰した調査研究論文となる。 メコン側周辺国(ラオス、タイ、ベトナム、カンボジア)への第一回の現地調査を行い、現地の貿易政策にAid for Trade政策がどのように影響を与えているか分析するための一次資料を収集する。すでにコンタクトがある現地研究者と分析枠組みを共有する。また同地における日本の開発政策を検証する。 調査論文を元に、WTO・UNCTAD本部への訪問を行う。両機関の公式文書のサーベイを行い、担当者に対して両機関の今後の計画と対応をインタビューすることが目的の一つである。 以上の、目的はおおむね順調に果たすことができたとみなしている。特に、メコン川周辺地域には本研究以外でも2回訪問しており、多くの知見を得ることが出来た。こうした研究の基礎的な積み重ねをもとに、具体的な研究実績として、本年度は、1本の論文を出版物として公刊し、1本の論文を草稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は1回の現地調査を行い、2回の学会参加を行った。これらは全て、交付申請書に記載した「研究の目的」に対して、予定通りである。また、論文についても1本のサーベイ調査論文を脱稿済みであり、来年度何らかの形での出版を予定している。そのため、現在までの達成度はおおむね順調に進展していると評価できる。 1回の現地調査は、カンボジア・タイでの1周間にわたるフィールドワークを実施した。 現地では農村部における貿易の実態や個票調査を実施した。こうした知見と仮説をより深めるべく、次年度以降も調査研究を実施したい。また、本研究調査以外にも、同地域を2回訪問しており、その際も本研究調査に近い領域の研究を実施しており、より本研究での知見をサポートすることができている。 2回の学会参加は、パリ・ベルリンにおいてそれぞれ行われた学会へ参加した。これらの学会参加で、最先端の分析方法と情報を手に入れることができた。 1本の公刊済み論文では、TPPをもとに、自由貿易体制のありかたの変化と東アジアや日本へのインプリケーションを論じている。これらは、WTO体制への東アジアの国々の取り組みの変化を考察する上で、基礎的な論考であり、重要な成果であると考えている。 1本の草稿中の論文では、東アジアの物流体制の変化が、各国の貿易制度の変化を促し、WTO体制から、地域同盟への各国の志向の変化を証明している。こうした論点は、WTOのもとでのAid for Tradeのあり方を考える際に、重要な観点を提供する基礎的資料となる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究の進捗状況が順調であったため、新年度も研究計画書を前提とした研究を続けていく。そのため、本年度の研究計画は以下のとおりである。 1.前年度の文献調査および国際機関へのインタビューにて収集した資料および情報をもとに、世界銀行・WTO・IMF等のAfT政策を再検討し、理論的整合性を分析する。 2.メコン川周辺国への第2回の現地調査を行い、前年度の現地調査を元に追加的資料の収集を行う。特に、PRSPにおける貿易政策との整合性を念頭におき、ケーススタディを深化させる。同時にラオス国立大学においてワークショップを開催する。本研究の中間経過を現地で発表することによって、現地からのインプットが可能となる。 3.WTO・UNCTAD本部への訪問を行う。この訪問では、前回の訪問で得た資料および情報を精査した上で、両機関の最新の対応を非公式にインタビューすることが目的の一つである。 こうした、実証的調査と理論的融合を目指したものが、本研究の問題意識であり、本年度も引き続き、同様のアプローチを取る予定である。また、本年度は、個人研究費を利用したメコンデルタ流域での調査を実施し、本研究をサポートする。また、アジア経済研究所のドーハ・ラウンド研究会に参加している。同研究会では、WTOとの共同研究を実施する予定であり、本年度はジュネーブでの共同報告会を予定している。本年度は、そうした恵まれた外部環境を利用してより深い研究を推進していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は、交付申請書に記載した「研究の目的」から変更はない。これは、昨年度の調査研究が予定通り達成することができたためである。よって、交付申請書記載の通りの研究費の仕様計画となる。 その内訳は、旅費のうち国内旅費は、国内の関連研究者・実務家へのインタビューを含む資料収集のための旅費を積算している。海外旅費は、調査対象地域である1回のメコン川流域地域および、1回のジュネーブにおけるWTO・UNCTAD、ロンドンにおけるDFID・NGO関係者への聞き取り調査を実施するための金額を想定している。申請課題とは別に個人研究費を用いて、東アジア地域への出張を年に1回程度、組こむ予定である。「設備備品」については、東アジアを中心として、貿易、国際協力を扱った書籍・資料の購入に充てる。消耗品費は文具代に利用する。「謝金」は、現地調査時に専門的な知識の提供を受ける研究者などに対する指導助言謝金および通訳費用を計上している。論文執筆および最終報告は英語と日本語で発信する。英語で海外査読雑誌への投稿を行うため、論文の翻訳校正費用が必要となる。「その他」については、東アジア調査の際、地方を含む調査を中心とした日程を組むため、期間中に毎日車両を借り上げることにしている。また、主に現地調査中の利用を想定した資料複写費、最終報告書印刷費も合わせて積算している。以上のいずれの費目についても、研究規模・体制を勘案して妥当かつ必要な研究経費であると考える。
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