研究課題/領域番号 |
24730259
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
伊藤 秀和 関西学院大学, 商学部, 教授 (30368451)
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キーワード | 経済政策 / 空間経済学 / 経済地理学 / 計量経済学 / グローバル / ロジスティクス / 港湾 / 国際情報交換 |
研究概要 |
港湾貨物流動と地域経済構造の空間的相互依存関係を明らかにすることが本研究の目的であり、先進主要国・地域(具体的には、日欧米の3地域)を対象に、同一変数・分析枠組みを用いることで、移輸出入別・似姿別・品目別貨物の空間的分布・特性と地域経済構造の関係性やその地理的な影響範囲を議論する。 具体的には、港湾属性変数と地域経済変数から各地域で類似する特性要因を抽出・グループ化し、先進主要国での比較分析を行う。得られた各地域の要因係数を説明変数とした空間自己相関モデルを採用することで、周辺地域の影響も空間的分布パターンとして取り入れたモデル分析が可能となり、港湾機能・特性と地域経済活動の関係性の程度やその範囲を異なる地域レベルで検証する。 本年度は、先進主要国に加え中国・インド・ブラジルなど新興国をも対象としたデータベース(40カ国・約300の港湾地域)を用いて、工業化進展や経済成長が港湾貨物取扱量に与える影響を詳細な定量分析により明らかにした。さらに、同様の分析枠組みを用いて、港湾荷役効率性が地域経済や港湾貨物取扱に与える影響をパネル分析(1996年‐2011年)から議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題における研究成果(進捗)は、以下の3点である。 (1)日本・欧州・北米における実証分析からロジスティクス機能と地域経済構造との類型化を行い、一定程度の類似性を確認したことで、グローバル化が進展する中でも、地域経済活動に対する港湾物流機能の特化性を検証した(査読付き学術論文掲載済み)。 (2)BRICSなど新興国を含めた40カ国・約300の港湾地域を対象に、地球規模のデータベースを構築し、(1)と同様の分析枠組みで定量分析を行った。その結果、グローバルデータを採用することで各国・各地域の特徴はある程度薄れるものの、地域経済の規模や発展段階に寄らず、地域経済活動に対する港湾機能の重要性(特に初期の発展段階で)を確認した(査読付き学術論文投稿済み)。 (3)グローバルデータを用いて、港湾荷役効率性が地域経済や港湾貨物取扱に与える影響をパネル分析(1996年‐2011年)から議論し、欧米に比べアジア港湾における荷役効率性の域内分散(格差)は大きいものの、過去15年間における急速な改善効果やその要因を明らかにした(査読付き学術論文投稿済み)。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実証研究は港湾地域レベルの分析が中心で、計量経済モデルにおいて国レベルの影響を考慮するものの、例えば、隣接各地域の影響は一様と仮定し、空間的な影響差異(距離的な広がり)は十分に考慮されていない。 これまでに構築されたデータベースを用いて、各港湾地域と周辺(あるいは隣接)地域との相互依存関係を明示的に取り入れた空間自己相関モデルを構築し、実証分析を行う。新興国や後進開発国をも含むため、データ制約はあるものの、港湾貨物流動は背後圏の経済レベルやその成長速度、および構造変化に大きく影響を受けるため、グローバル分析が不可欠である。
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