研究課題/領域番号 |
24730265
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
熊本 尚雄 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (30375349)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ユーロ諸国 / 中東欧諸国 |
研究概要 |
ユーロ導入後のユーロ圏において国債市場が統合されてきたかどうか,また各国における国債利回り格差が各国の財政の健全性を反映していたかどうかを実証分析した。具体的には,国債市場統合の実証分析においては,名目金利差におけるβ収束性とσ収束性をパネル単位根検定により分析した。分析の結果,ユーロ導入から2007年12月までの期間においては,β収束性,σ収束性ともに満たされ,ユーロ圏の国債市場は統合過程にあったことが示された。その一方,2008年以降,サブプライム・ローン問題が世界金融危機へと発展し,またギリシャ財政問題が欧州信用不安へと発展する中で,ユーロ圏の国債市場は発散していることが示された。 また,国債の利回り格差の決定要因に関する分析として,危険回避的な投資家の最適化問題より導出される信用リスク,流動性リスク,投資家の危険回避度という利回り格差の決定要因を説明変数とした実証分析についても行った。分析の結果,2007年第4四半期までの標本期間の前半においては,信用リスク,および流動性リスクを表す指標,また,これらと投資家の危険回避度を表す指標の交差項のいずれも有意でないことが示された。この結果は,標本期間の前半においては,国債の利回り格差は各リスクを十分に反映していないこと,すなわち市場規律が欠如していたことを意味すると思われる。一方,2008第1四半期から2011第1四半期までの標本期間の後半においては,政府債務残高の対GDP比率,および流動性リスクを表す指標が,有意水準5%の下で有意であること,一方,信用リスク,および流動性リスクと投資家の危険回避度との交差項は,いずれも有意とはならないことが示された。 以上の分析結果は,国債市場が統合される中,市場は各国の財政政策の健全性を差別化する能力・意思を欠如させ,市場規律が十分に機能していなかった可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた目標は、上記の通り、順調に進展している。ただし、残された課題も存在する。 第一に説明変数の精緻化である。データの入手可能性から,デット・サービスの対歳入比率やビッド・アスク・スプレッドは説明変数として用いなかったが,これらを含めた分析に拡張することは喫緊の課題である。さらに,財政政策の健全性が悪化するほど,市場による懲罰が増大する可能性を考慮するため,非線形効果を考察する必要もあると思われる。 第二に分析方法の改善である。操作変数法に基づいたパネル分析を行ったが,国債の利回り格差における系列相関を考慮すれば,ダイナミック・パネルによる分析により頑健性を確認する必要があろう。 第三に分析対象国の拡大である。早期の段階でユーロを導入した12ヶ国を分析対象としたが,これを他のユーロ導入国に拡大する必要がある。 これらについては、今後、早急に取り組むこととしたい。
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今後の研究の推進方策 |
中東欧諸国において、通貨代替が存在する場合、通貨代替が為替相場のボラティリティにどのような影響を及ぼすかを明らかにすること、金融政策の自由度をどのように制限し、これがどの程度、国内の厚生を損失させているかを通貨代替を考慮した動学的確率的一般均衡(DSGE)モデルに基づき、実証分析することである。後者については、金融政策反応関数を損失関数から導出し、通貨代替がどのような影響を与えるか、また、カリブレーションによるインパルス応答関数分析を行うことで、通貨代替の程度が金融政策の効果に与える影響についても明らかにする。さらには、金融政策反応関数において国内変数と海外変数(外国金利、為替相場)のどちらの影響を受けているかについても明らかにする。 この他に、1990年代には欧州通貨危機が発生し、また、先述の通り、2008年以降の世界金融危機や2009年末からの欧州財政・金融危機により、急速な経済成長で世界経済を支えてきた中東欧諸国から海外投資家が投資マネーを引き揚げる動きが広がり、通貨危機の様相を呈したため、中東欧諸国における通貨代替と通貨危機の関係を実証分析し、具体的な通貨危機抑止策を導くことである。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究を遂行するに当たり、必要となるデータ(International Financial Statistics(CD-ROM)、Direction of Trade Statistics(CD-ROM)Balance of Payments Statistics(CD-ROM))や書籍(Annual Report on Exchange Arrangements and Exchange Restrictons等)の購入、学会や研究会(日本経済学会、日本金融学会等)へ参加するための旅費を中心として使用する予定である。
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