研究課題/領域番号 |
24730270
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 札幌学院大学 |
研究代表者 |
井上 仁 札幌学院大学, 経済学部, 准教授 (10545057)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リスクテイキング / 金融政策 / 低金利政策 / ダイナミックパネル |
研究概要 |
本研究の目的は,日本の低金利期間における金融機関のリスクテイク行動の詳細を実証的に明らかにすることである.初年度である平成24年度においては,低金利期間における金融機関のリスクテイク行動についての理論的背景をまとめるために,先行研究の理論文献を整理し,理論モデルについて理解を深めた.また,欧米における実証研究の整理を行った. 次に,国内の銀行財務データを用いて,1999年に開始されたゼロ金利政策以降の低金利期間における実証分析を行った.国内銀行が日本銀行の低金利政策に反応して,どの程度リスク資産に資金を振り向けたのかについて,動学パネルデータ分析を行った.具体的な推計手法としては,Blundell and Bond(1998)の2段階システムGMMを用いた. リスクテイク行動を表す指標としては,総資産に占める貸出総額の比率,貸出総額に占める中小企業向け貸出額の比率,総資産に占める現預金以外の資産の比率,有価証券に占める株式の比率,総資産に占める株式の比率,自己資本比率規制で規定された自己資本比率の分母に当たるリスク資産(の総資産に占める比率),不良債権保全率など様々な指標を考慮した.さらに,個別銀行の性質(自己資本の潤沢度,不良債権比率,経営状態など)によってどのようにリスクテイク行動が異なるのかも検証した. 個別具体的な分析結果は,学術論文として公表を予定しているため本欄に記載することは意図的に避けることとするが,当該の低金利期間において,国内銀行によるリスクテイク行動が部分的に確認された.低金利政策期間の金融機関のリスクテイク行動を評価することは,日本に限らず多くの国々にとって重要な課題となっている.本研究の意義はこの重要課題の解決に貢献できる点にある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,分析対象の金融機関として,銀行の他に信用金庫,信用組合,保険会社を加えて分析することを計画していた.しかし,データの入手と加工が遅れたために,銀行以外の金融機関については分析対象から除外せざるを得なかった.今後は,分析対象として順次追加していく.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に実施した研究を引き続き継続していく.平成24年度の当初計画では,銀行の他に信用金庫,信用組合,保険会社を分析対象とする予定であったが,データの入手と加工が遅れたために,銀行以外の金融機関については分析対象から除外せざるを得なかった.除外した金融機関のデータを順次整理し,分析を補完していく. 平成25年度の当初計画通り,研究を継続していく.具体的には,低金利期間におけるリスクテイク行動の地域間の相違を実証的に検証する.これまでの研究を踏まえ,個別金融機関間の相違とは異なる地域間の相違が明らかになることが期待される.
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次年度の研究費の使用計画 |
銀行以外の金融機関のデータについて,データ購入のための費用と,データ抽出加工のためのアルバイト雇用費用を当初予算に計上していた.しかし,データ入手が遅れたため,当該予算を執行できなかった.そのために,平成24年度未使用額が生じた. 平成25年度には,当初計画に加えて,上記データ関連費用に研究費を使用する予定である.
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