研究課題
本研究は、寄付・ボランティアといった利他的行動について行動経済学的見地から分析し、利他的行動の意思決定メカニズムを実証的に明らかにしようとするものである。24-26年度前半までの研究進捗に基づき、当初の最終予定年度であった26年度にアンケート調査の実施を予定していた。しかし26年度後半以降に既存調査の個票データの提供を受けることが可能となり、予定していた新規調査の設計・実施の必要がなくなった。このため、調査委託費として計上していた分について未使用額が発生した。そこで、当該研究課題の実施期間の修正が必要となり、本年度までの期間延長申請を行った。本年度は、寄付行動の決定要因に関する分析結果や寄付の実態調査等から得られた知見をベースに、寄付・ボランティアの意思決定や行動選択を促す社会経済的要因についてさらなる精査を行った。自発的再分配選好としてのリスク選好や利他性、互酬性が寄付やボランティアに及ぼす影響について、計量分析による日米比較や、社会的活動との行動間比較を行った。また、これらの選好が社会化あるいは社会性を育む過程や環境、経験を通じて内在化されるものであると考え、内生的に決定するモデルについても検証を行った。また、日本の寄付における近年の制度的な動きや資金調達に関する取り組みについて整理し、それらの定量的な効果について検証した。研究成果から得られた知見について、頑健性や統計的厳密性についての課題が残されており、これらについては研究を発展させる中で引き続き精査に努める必要がある。一方で、行動経済学的見地も取り入れることにより、寄付やボランティアといった活動がどのような公共政策と関連あるいは相互作用を持っているのかを明らかにするための政策志向的なアプローチと、価値規範的な視点も取り入れた分析に関する具体的な示唆を得ることができた。
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国民経済雑誌
巻: 213 ページ: 79-89
International Journal of Voluntary and Nonprofit Organizations
巻: 26 ページ: 1164–1188
10.1007/s11266-015-9588-9