| 研究課題/領域番号 |
24730273
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| 研究種目 |
若手研究(B)
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| 研究機関 | 九州大学 |
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研究代表者 |
中村 周史 九州大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (70612571)
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| 研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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| キーワード | 為替政策 / 小国開放経済 / 外貨建て資金調達 / 信用制約 / Fear of Floating |
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| 研究概要 |
本研究は、貿易と資金調達における為替リスクが新興国に及ぼす影響を分析し、どちらの為替リスクがより深刻な影響を新興国へもたらすのかを明らかにすると同時に、それに基づいてFear of Floating（為替変動の恐怖）に直面した経済が採るべき為替相場制度選択の示唆を得ることを目的とするものである。
平成24年度は、まずアジア各国におけるデータと先行研究に関するサーベイから新興国における為替リスクに関する議論の整理と実証的エビデンスを得る作業を行った。具体的には、東アジア諸国を対象に決済通貨比率や、為替レートの浸透率、外貨建て資金調達の割合等について先行研究とデータを基に検証した。結果、これらいずれにおいても、依然として新興国の多くが貿易、資金調達の両面で深刻な為替変動のリスクに晒されていることを示している。この研究成果の一部は本の一章としてまとめ、出版されている。
また並行して、これら事実に基づいた為替リスクを仮定した小国開放経済の動学的一般均衡モデルの構築を行った。具体的には、多くの新興国に見られるような高い貿易開放度を仮定すると同時に、現実に新興国が直面している外貨建て信用制約が存在する小国開放経済モデルを構築した。この際、複数の国際通貨に対する為替レートを考えるために、2つの大国を外部経済として仮定し、これらと貿易および資金調達を行うモデルを考えて拡張している。こうしたモデルを用いて、貿易における為替変動を抑制する政策と資金調達における為替変動を抑制する政策の内、どちらが為替変動に対してより効率的に小国の経済を安定化することが出来るのかを、様々なパラメータの下で比較した。その結果、少なくとも完全な為替のパス・スルーの下では、貿易の開放度や取引量シェア、通貨構成に関わらず、外部資金調達の不安定性が当該国の経済成長に対しより深刻で持続的な影響を与えることが確認された。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は予定していた二つの目標である、「アジア各国におけるデータと先行研究に関するサーベイから新興国における為替リスクに関する実証的エビデンスを得る」こと、および「実証的エビデンスに基づいた問題を考慮した小国開放経済を仮定したDSGEモデルを構築する」ことを現在時点でほぼ完了しており、研究計画は当初予定通り進捗していると言え、計画全体の約半分近く遂行している状態にある。特に前者については、本の一章として出版しており、研究成果の一部を社会へと還元している。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度に構築したモデルを基に、貿易面に不完全な為替のパス・スルーが存在するというより現実的な仮定を導入し、貿易や資金調達を通じた為替変動の影響が、どの程度の厚生費用をもたらすかを数値解析により計算し、その比較を行うという作業へ移る。シミュレーションを行うにあたって、大国間で発生する1単位の為替変動が、各為替政策の下で小国開放経済にどのような影響をもたらすかを比較する。このショックが当該国のマクロ経済変数だけでなく、政策当局の損失関数にどの程度影響を及ぼすかを見る事で社会厚生の比較を行い、Fear of Floatの為替リスクの内、より深刻であるものを明示する。この成果を国内外の学会やコンファレンスで報告し、適宜コメントをもらうことでモデルの修正と結果の確認を繰り返し、より効率的な為替政策についての示唆を得る。
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| 次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は申請者の所属が変更となり、研究環境が本研究課題申請時点と大きく変わったことにより、次年度使用額が発生した。特に、当初購入予定であった統計ソフトウェアの一部が利用可能になったこと、また、転属となった初年度ということもあり、長期に渡るような出張を抑制したことが、当該研究費発生の主たる理由である。一方、研究拠点が東京から福岡へと変更された現在においては、申請時点の所属では予定していなかった、モデルを修正するために不可欠なコメントを貰うための都内研究報告出張旅費や、平成25年度に購入予定であったソフトウェアと追加Toolkitの購入費用の円換算レートでの値上がりによる追加的な支出が発生するため、当該研究費はこれらに充てられることとなる。また次年度申請分については、当初計画通り国内外での研究報告のための旅費と当該論文の英文校正費用、上述のソフトウェア購入に充てることを予定している。
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