研究課題/領域番号 |
24730273
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 周史 九州大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (70612571)
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キーワード | 為替政策 / 小国開放経済 / 外貨建て資金調達 / 信用制約 / Fear of Floating |
研究概要 |
本研究は、貿易と資金調達における為替リスクが新興国に及ぼす影響を分析し、どちらの為替リスクがより深刻な影響を新興国へもたらすのかを明らかにすると同時に、それに基づいてFear of Floating(為替変動の恐怖)に直面した経済が採るべき為替相場制度選択の示唆を得ることを目的とするものである。 平成25年度は、前年度に引き続き実証、理論の両面から新興国における為替レート変動が金融・貿易両面に与える影響の検証を行った。本年度は対象を中南米、ユーロ周縁国に拡張し、これらの影響を特にクロス・ボーダーでの資金循環と為替レート変動に着目した。その結果、ユーロ圏債務危機以降の中東欧諸国で特に深刻なデレバレッジの影響が観察され、為替レートの下落に伴う外貨建て債務の膨張が、これら中東欧新興国民間部門への融資の不良債権化を一層加速し、民間の消費及び投資の減少とGDP成長率の急落を引き起こしていた。一方、南米では対外与信に占める欧州銀行の高い割合にもかかわらず、その大部分が現地通貨建てであるために中東欧のような為替レート変動による信用チャネルを通じた影響は殆ど見られなかった。こうした現象は、前年度構築した小国開放経済モデルでの資金調達面での為替レート変動のマクロ経済に対する影響の示唆と一致するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた目標である「前年度に構築したモデルを基に、モデルの推定と印パルス応答関数によるシミュレーションでの為替政策比較を進める」ことについては、現在時点でほぼ完了しており、研究計画は当初予定通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在構築したモデルについてその頑健性を確認する作業に移る。その過程では国際コンファレンス等でコメントを貰い、適宜修正と確認作業を行うことも含む。国際コンファレンスについては既に1か所報告予定である。また、現在のユーロ圏債務危機によるデレバレッジが本研究の対象とする現象を中東欧諸国で発生させているため、これらを実証分析によって検証し、為替変動によるマクロ経済への影響を一層明確にしたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究環境の変化により、予定の見通しが立たない状況が発生し、年度後半の出張を抑制したため。 出張旅費に加え、データ収集および基礎的な分析にあたり大学院生をアルバイト雇用するため、謝金の支払いとしての使用を予定している。
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