外国為替直物市場(以下、為替市場)の市場参加者の期待を、高頻度データを用いて日次・日中ベースでリアル・タイムに計測することを目的とし、研究をおこなった。“市場が何を考えているか”をより正確にリアル・タイムで把握することは、為替市場に対し介入政策などを実施する通貨当局にとって必要不可欠である。そこで本研究は、市場期待に関する情報をリアル・タイムに提供する計量経済モデルを開発することで、通貨当局のより効率的な介入政策の実現に貢献することを試みた。平成26年度における、具体的な研究成果としては、国際学会での口頭報告(フルペーパ提出済み)2件である。加えて、2本の論文も執筆しており、これらも近い時期に、学会報告、国際専門誌への投稿を予定している。
株式市場の分析では、成り行き注文のインバランス、つまりは売り買いの一方に注文が偏る「オーダー・インバランス」が生じる理由として、私的情報がその背景にあると考える。つまりは、将来の株価に影響を及ぼす私的情報を入手した情報トレーダーは、その情報に基づき売買を行う。ここで、情報に基づかない取引は無作為に生じると考えると、オーダー・インバランスが生じるのは、それが私的情報に起因すると考えられる。当該研究では、オーダーインバランスに注目することで、それから市場期待を計測することを試みた。具体的な研究成果としては、オーダーインバランスは、将来の為替レートを予測し、つまりはオーダーインバランスには将来の為替レート水準に対する市場期待が反映されており、その期待はオーダーインバランスを介して為替レートに反映されることが、実証的に示唆された。
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