研究概要 |
平成25年度は本研究課題の成果として二編の論文を、国際的学術誌に公刊することが出来た。 第一の成果論文は、“Currency Integration under Labor Mobility: When Cost Is Incurred”(Journal of Economic Integration, Vol.29, No.1, pp188-209, 2014)である。こちらは「最適通貨圏理論」としてこれまで認識されてきた「労働の移動性」について一般均衡モデルに基づいて妥当性を検証し、各国から雇用される労働力が不完全代替である場合には、必ずしも古典的な議論が成立しないことを示すものである。 第二の成果論文は、“Lending Rate Spread Shock and Monetary Policy Arrangements: A Small Open Economy Model for ASEAN Countries”(Asian Economic Journal, Vol.28, No.1, pp19-39, 2014)であり、銀行貸付が重要な資金調達手段であるASEAN地域において、銀行貸付金利のショックが外国の金融政策ショックと同程度の厚生損失を発生させ得ることを、動学的一般均衡モデルのシミュレーション分析から明らかにしている。 本研究課題の主たる目的は政府の財政規律を考慮に入れながら、通貨同盟や開放経済における金融政策運営について考えることにあった。前掲二編の成果論文はいずれもこうしたトピックに関わりが深く、本研究課題の遂行の副産物として得られた成果である。 これらの論文公刊を前提として、現在は更に二つの方向性から関連研究を進めている。第一の方向性は、前掲のJournal of Economic Integration掲載論文に不完全パススルーを導入して、新たな示唆を導くというものである。こちらについては既に分析が完了し、既に国際的学術雑誌への投稿を済ませている。 第二の方向性は、為替パススルーに関する理論と実証両面からの研究である。為替パススルーは開放経済における適切な金融・為替政策運営に深く関わっており、本研究課題に取り組む上でも重要な意味を持つものである。
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