研究課題/領域番号 |
24730281
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
遠藤 秀紀 日本福祉大学, 経済学部, 准教授 (10340283)
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キーワード | 金融リテラシー / 家計管理 / 日米比較 / 国際情報交換(アメリカ) / 認知能力 / 四分位回帰 / トービットモデル |
研究概要 |
平成24年度に引き続き、日米の大学生及び20~69歳の者を対象にアンケート調査を実施した。今年度の研究概要は、以下の通りである。 1、大学生の金融リテラシーの形成要因の日米比較 金融・家計管理に関する基礎知識を問う問題に対し、調査対象となったアメリカの大学生の平均正答率は71.2%だったが、日本の大学生は46.6%の正答率だった。「金融・家計管理に関する意思決定を適切に行う自信があるかどうか」についても、アメリカの大学生(360名)は82.8%が「自信がある」と回答したが、日本の大学生(216名)は61.6%にとどまった。一方で、「自信がない」と回答したアメリカの大学生の正答率が67.7%だったのに対し、「自信がある」と回答した日本の大学生の正答率は47.1%とそれより有意に低かった。これらの結果から、日本の大学生の金融に関する意思決定への自信が十分な知識のもとに形成されていない可能性が示唆された。 2、日本における金融リテラシーの形成要因 平成24・25年度の調査データを連結して要因分析を行った。加えて、昨年度執筆した論文に対して外部から指摘された統計学上の問題点に対処し、実証的帰結の再検証を行った。その結果、昨年度と同様の帰結が再度得られたほか、経済・経営やファイナンスの受講経験は、学歴が高いほどその経験を金融リテラシーの形成に活用している傾向が確認された。また、金融リテラシーは現在の貯蓄確率を有意に高めるという結果も得られたが、親が退職後に備えた貯蓄を行っている者ほど、貯蓄確率への影響が大きいという傾向も確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記の進捗状況から、おおむね当初の予定通り研究が進展していると判断した。 【1、平成25年度調査の実施と調査票の検証】当初の予定通り、20~69歳の男女を対象とするアンケート調査(一般調査)をインターネット調査会社に委託し、8月に実施した。日米の大学生に対するアンケート調査も、アメリカの研究協力者からの協力を得て実施した。その上で、8月下旬から9月初旬にかけて渡米し、複数の研究協力者(うち1名は論文の共同執筆者)と、今年度の調査結果の一次的分析結果及び調査票の内容に関するミーティングを行った。その結果、より厳密な分析結果を得るための調査票の改訂点が明らかになった。本改訂点は、平成26年度調査に反映させることにしている。 【2、金融リテラシーの形成要因の分析】大学生対象の調査による日米比較分析は、平成25年度に"Observation of Financial Literacy among the Selected Students in the U.S. and Japan"として論文化した。平成25年度末に投稿した雑誌からの指摘をもとに内容を改めて推敲し、再投稿準備を済ませた。また、20~69歳の日本人を対象とした分析結果は"Does Parents' Savings Improve Their Child's Financial Literacy?"(仮題)として論文化を進めている。 【3、金融リテラシーが住宅ローンの理解に与える影響】平成24・25年度の一般調査を連結し、住宅ローンの取得状況やローン支払い状況等の情報と金融リテラシーの関係を分析できるようになった。現段階では、金融リテラシーを問う質問に不明確な回答をする傾向が強い者ほど取得した住宅ローンの種類を把握していないなどの影響を確認している。
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今後の研究の推進方策 |
【1、平成26年度調査の実施】20~69歳の者を対象とする調査(一般調査)・大学生調査ともに、平成26年6月までに調査票の質問項目を見直す。具体的には、Frederick, S. (2005) "Cognitive Reflection and Decision Making", Journal of Economic Perspective, Vol. 19(4), pp. 25-42などの先行研究をもとに回答者の認知能力を問う質問を調査票に組み込む。そして、今年度と同様一般調査は8月までに、大学生調査は翌年1月までに実施する。回収したデータを既存のデータと連結させるためのプログラムは今年度に作成済みのため、過年度より速やかに実証分析に移行することが可能である。 【2、金融リテラシーの形成要因の分析】今年度、内容を推敲・修正した論文(大学生調査を用いた日米比較研究)を、平成26年度前半に国外の学術雑誌に投稿する。大学生調査については、まだ予備的分析段階ではあるが、ローンに対する主観的なリスク水準と金融リテラシーの水準との間に関連が見いだされるため、検証を進めることにする。また、20~69歳の日本人を対象とした分析結果をもとにした論文は平成26年度前半にまとめ、研究会報告等を経て国外の学術雑誌に投稿する。 【3、金融リテラシーが住宅ローンの理解に与える影響】今年度までの調査から、金融リテラシーが住宅ローンの理解に影響を与え得ることは確認できている。しかし、アンケート回答者のうち住宅ローン取得者は日米とも約500名であり、取得したローン種類や支払状況などにより細分化することは容易でない。そこで、平成26年度の回収データを連結した上でより詳細な分析を実施し、同年度中に論文として成果をまとめたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、今年度の研究調査に伴う旅費(海外渡航を含む)を18万円と見積もったが、実際の使用額を約13万円に収めることができた。また、アンケート調査を昨年度と同じ調査会社に委託したことにより、調査票(英文)のスペルチェック費用などが不要となったため。 平成26年度は、アンケート調査の調査項目を加えるため、項目数増加による追加費用や追加した項目(英文)のスペルチェック費用が発生する。これらに加えて消費増税の影響もあり、アンケート調査にかかる費用が当初計画(90万円程度)以上に必要となる。次年度使用額は、その追加費用分に充当する。
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