研究課題/領域番号 |
24730286
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
名方 佳寿子 摂南大学, 経済学部, 講師 (70611044)
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キーワード | tax interactions / commodity tax / cross-border shopping |
研究概要 |
(内容)平成25年度においては州政府の目的関数の推計を試みた。平成24年度の研究結果から、消費者の需要関数が推計され、また政府が住民の厚生の最大化を図るBenevolentな政府である可能性が高いことが分かった。そこでこの2つの前提をもとに、州政府の目的関数を立ち上げ、GMM(Generalized Method of Moment)法を用いて推計した。また推計されたモデルが正しいかどうか検証する為、推計された州政府の目的関数を用いて州政府の最適な税率をシュミレーションで求め、現実の税率とどれだけ似通っているかについて検証を行った。 (意義・重要性)この分析により、もしシュミレーションによって求められた税率と現実の税率が近似している場合、推計されたモデルは政府の実際の行動を的確に反映していることを意味し、政府の税率の設定や公共事業の支出行動を把握するのに役立つ。また今後新たな税制改革が行われた場合、消費者と州政府がどのように行動を変化させ、その結果社会厚生がどのように変化するかまで把握することができる。 (暫定結果)分析の結果、州政府の高速道路の支出には、各州における高速道路財団の財政事情(収支、連邦政府からの補助金、公債)の他、社会経済変数(人口、若者、高齢者の人数)などが大きく影響することが分かった。一方社会福祉支出に関しては、社会経済変数(人口、タバコを吸う人口の割合)や地域の特殊性を示すダミー変数が影響をもたらすことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進展が少し遅れている要因として以下の3つがあげられる。 1.州政府の目的関数の推計に思いのほか時間がかかっている。暫定的な結果は出ているが、標準偏差が異常に大きな値を取っており、経済学的に考えて重要であろうと考えられる説明変数の一部が有意にならない結果となっている。また推計されたモデルをもとに税率のシュミレーションを行っているが、現実の税率との関係性が依然として強く出ていない。操作変数を変えたり、推計モデルの修正など改良を試みているが大きな解決策にはまだ至っておらず、今後さらに工夫して望ましい結果を導き出す必要性ある。 2.この論文の他に2本の論文について執筆活動を行っている関係で、十分な時間をこの研究に費やすことが難しい時期があった。 3.平成25年度の後期には急遽関西学院大学における非常勤講師を頼まれ2コマを教えていた。その準備や教鞭のため研究に専念することが難しい時期があった。
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今後の研究の推進方策 |
第一に州政府の目的関数の推計方法を更に工夫しよりよい推計結果を導く。先行研究などを再度分析したところ、州間の地域格差は思いのほか大きく、限られた社会経済変数だけでは十分に地域の特殊性が捉えきれていないのではないかと考え、今後はこの地域の特殊性をうまくモデルに組み込む工夫を考えたい。また用いられた社会経済変数も一次関数の形でモデルに組み込まれているので、この関数を変形させることで推計結果の改善を図りたい。 第二に州政府の目的関数が判明したのち、水平的・垂直的税競争の規模と方向性を示す反応関数の傾きを推計する。州政府の目的関数を税率で微分した第一階の条件式を更に連邦政府や他の州政府の税率で微分することによって反応関数の傾きを示す式が導かれる。この式に求められた消費者の効用関数のパラメーター、州政府の目的関数のパラメーター、税や価格等のデータを代入することによって州ごとの他の州政府や連邦政府の税率の変更に対する反応関数の傾きを推計する。またモデルを吟味することによって、水平的・垂直的税競争が生じる構造と要因について分析する。 第三に本研究の結果とWeighted Matrix Methodを用いた既存の研究との結果の違いについて分析する。Besley and Rosen(1998)とDevereux et al(2007)はWeighted Matrix Methodを用いて同じアメリカの州レベルのタバコ税・ガソリン税の税競争について分析している。この既存の研究と本研究の結果の違いとその原因について分析する。
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