(内容)H26年度においては、H25年度において構築・推計をおこなった州政府の目的関数をもとに、近隣の州政府や連邦政府の税率の変更に対して州政府が自分の州の税率をどのように変更をするのかを分析した。具体的には、州政府の目的関数を税率で微分した第一階の条件式を更に連邦政府や他の州政府の税率で微分することによって求められた反応関数の式に消費者の効用関数のパラメーター、州政府の目的関数のパラメーター、税や価格等のデータを代入し、州ごとに他の州政府や連邦政府の税率の変更に対する反応関数の傾きを推計した。更に同じタバコ・ガソリン税を用いた既存の研究(Besley and Rosen(1998)とDevereux et al(2007))と本研究の結果の違いとその原因について分析した。 (結果)州政府間において税競争はほとんど存在しないことが分かった。その原因は、移動コストの方が商品の価格差の便益よりも大きいこと、タバコ・ガソリンの消費支出額が所得に占める割合が小さい為州間をまたいで買い物に行く人口が少ないからである。一方、連邦政府と州政府の間にはある程度税競争が生じていることが分かった。それはタバコとガソリンの需要の価格弾力性がある程度あるため、連邦政府が税率をあげると課税ベースが縮小するため、州政府も税収確保の為に税率をあげなくてはならなくなるからである。また既存研究ではタバコにおいては州間において租税競争はあり、ガソリンについては連邦政府と州政府の間に租税競争があるという、本研究と異なる結論がでていた。その原因をReplicationによって分析した結果、既存研究はマクロの経済的なショック、政治的なヤードスティック競争といったすべての要因を考慮したうえでの租税競争の有無を分析していたのに対し、本研究は州間をまたがって買い物に行く消費者の存在によって生じる租税競争の有無を分析していたことから結果の違いが出ていたことが分かった。
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