研究課題/領域番号 |
24730287
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山根 明子 広島大学, 社会(科)学研究科, 講師 (60580173)
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キーワード | ファイナンス / キャッシュフローリスク |
研究概要 |
本研究の目的は、日本の株式市場における資産価格に関して、企業のキャッシュフローに関する長期データを用い、株式収益率の動きを説明することである。平成25年度には、24年度に作成したデータを用いてキャッシュフローに関するリスクファクター(キャッシュフロー・ベータ)の推定を行い、キャッシュフローに関するリスクと資産価格に関する分析を行った。 本研究では、企業のキャッシュフローの指標としてROE(自己資本利益率)を用い、分析対象とするポートフォリオのROEをマーケットポートフォリオのROEに回帰した際の係数をキャッシュフロー・ベータと呼んでいる。株価純資産倍率で5段階に分類されたポートフォリオそれぞれについてキャッシュフロー・ベータを推定したところ、バリュー株ポートフォリオのキャッシュフロー・ベータがグロース株ポートフォリオのキャッシュフロー・ベータを上回っていることが明らかになった。この傾向は、ポートフォリオの保有期間を長く(5年間)設定することによって顕著になり、バリュー株ポートフォリオの相対的に高い収益率(バリュー効果、バリュープレミアム)と整合的である。さらに、推定されたキャッシュフロー・ベータのポートフォリオ収益率に関する説明力を分析するため、クロスセクションの分析を行った。その結果、ポートフォリオの保有期間を長くすることによって、キャッシュフロー・ベータの収益率に対する説明力が改善される可能性があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度には、24年度に作成したデータを用いてキャッシュフローに関する指標の作成を行い、キャッシュフローに関するリスクファクターの推定や分析を行うことができた。論文としてまとめるうえで最低限の分析は終えることができたため、26年度は論文の作成や報告、追加的な分析の実施にあてることができる。したがって、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、これまでの分析結果をまとめて論文を作成し、いくつかのセミナーや学会で報告を行っていく。そして、他の研究者からのコメントを踏まえ、分析の不十分な点を補い、論文の改訂を進める。特に、収益率を用いた典型的な資産価格モデルと、本研究で用いているキャッシュフロー・ベータとの関係について追加的な分析が必要であると考えられる。先行研究では、キャッシュフローによるリスク評価と収益率によるリスク評価が対応していることが示されているが、日本のデータに対してもそのような対応付けが可能であるのかを確認する必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度中に研究会での報告を計画していたものの、スケジュールが調整できず実現できなかったため。 平成26年度には、25年度に実現できなかった研究会報告を行う予定である。
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