最終年度は、史料調査としては、国内各大学図書館で行ったほか、国内に所蔵されていないイギリス外務省・植民地省関連の史料については、イギリス国立公文書館で調査を行い、関係史料の収集を終了した。 文献研究の成果としては、Hinterlands and Commoditiesの中で中国国内における移民を集中的に取り上げた。 対外的な発信としては韓国の漢陽大学の学術講演において労働力の移動に関して取り上げ、また成均館大学における東洋史学会春季学術発表会では、苦力貿易の問題を報告した。さらにアメリカのプリンストン大学においては日中の近代の比較史について報告を行い、全体として十分な発信を行うことができた。 期間全体を通じた成果としては、2013年2月に『海の近代中国──福建人の活動とイギリス・清朝』名古屋大学出版会を出版したのが最大の成果である。その中で英籍華人の問題を全面的に解明したほか、19世紀中葉の苦力貿易問題についても新たな解釈を示した。また、2014年3月には『東洋史研究』上に北ボルネオ華工問題について発表し、イギリス側の多様な史料を用いつつ、中国側の対応に注目することにより、移民のネットワークのあり方やその効率性を明らかにすることができた。 対外的にも、台湾(国際漢学会議)、南アフリカ(世界経済史会議)といった大規模国際学会のほか、フランス(社会科学高等研究院)やアメリカ(プリンストン大学)、韓国(成均館大学)など、グローバル・ヒストリー研究や東アジア研究における世界的な研究機関において英語・中国語で報告を行うことにより、移民研究のみならず、日本の中国史研究についても十分発信することができた。
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