研究課題/領域番号 |
24730291
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 公益財団法人三井文庫 |
研究代表者 |
木庭 俊彦 公益財団法人三井文庫, 社会経済史研究室, 研究員 (10553464)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 経済史 / 交通史 / 石炭産業史 |
研究概要 |
平成24年度においては、明治期の三池炭、筑豊炭の市場拡大と沿岸輸送上の隘路に関する資料を探索した。北部九州を中心にして、その残存状況を調査・把握するとともに、必要な資料の複写・撮影・データ入力等の作業をすすめた。主な調査場所および収集資料は以下のとおりである。 第一に、九州大学附属図書館付設記録資料館に保管されている麻生家の資料(麻生家文書)のなかから、麻生家が経営する麻生商店の石炭流通に関わる資料群を確認した。明治30年代~明治40年代の麻生商店の資料に関しては、比較的豊富に残っており、研究計画の三年間をつうじて採集・分析していく予定である。本年度においては、麻生商店と若松港の石炭問屋との間の往復書類を撮影した。 第二に、大牟田市立図書館、大牟田市石炭産業科学館、長崎県南島原市口之津町所在の口之津歴史民俗資料館を訪問し、三池炭礦に関わる歴史資料の蓄積に努めた。特に、口之津歴史民俗資料館では、三井物産口之津支店、大牟田の艀船業者、口之津の港湾荷役業者、石炭仲仕に関する資料を閲覧した。 上記の調査に加え、公益財団法人三井文庫に所蔵されている三井物産、三井鉱山(三池鉱業所)の関連資料を丹念に読み込んだ。特に、三池炭の海上輸送に関わる情報を拾い上げ、データ入力をすすめた。 以上の調査で集めた資料は、本計画を遂行していくうえで核となるものであり、今後の研究の進展が見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、当初の予定どおり残存する資料を幅広く集めることによって、三年間の研究計画をすすめていくうえでの基礎づくりを行った。 三池炭に関しては、勤務先である公益財団法人三井文庫に所蔵されている三井物産、三井鉱山(三池鉱業所、三池港務所)に関する資料群の中から、利用可能な資料のピックアップ作業をおおむね終了した。その資料にもとづいて、明治期の三池炭礦における沿岸輸送の問題、明治期から大正期にかけての港湾荷役の問題について考察することができる。 筑豊炭に関しては、九州大学附属図書館付設記録資料館に保管されている麻生家文書の中から、明治期における麻生商店と若松港の石炭問屋との往復書類を撮影した。麻生商店の石炭流通・輸送を担っていた問屋の動向を分析することで、当該期の国内石炭市場の拡大について帆船輸送のあり方と関連づけて論じることができる。 以上、調査対象に加えるべき資料は依然として多数残されているが、ひとまず核となる資料群の選定は終了し、三年計画の研究の目途が立ったと考えている。麻生家文書のなかの石炭流通関係資料が想定以上に豊富であったため、成果を発表するまでには至らなかったが、資料の全体的な把握および収集という点からみれば、本研究は着実に進展している。本年度の調査結果を利用すれば、三池炭・筑豊炭の沿岸輸送の実態や、明治期の帆船海運における取引形態が十分に解明できると予想している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成24年度に採集した資料をもとにして、計画どおり分析作業をすすめていく。また、その成果を主要学会で報告し、論文として公刊する予定である。 平成25年度には、三池炭に関する分析をすすめるが、その際には沿岸輸送と港湾荷役を区別して考察していく。明治20年代から30年代にかけての三池炭礦と大牟田地域の艀船業者との取引関係、明治30年代における三池炭礦の港湾荷役への関わり方、その後の大正期における港湾荷役の機械化と港湾労働者の管理方法の変化が主要な論点である。 上記の分析とあわせて、九州大学附属図書館付設記録資料館保管の麻生商店の帳簿資料を閲覧し、データ入力作業をすすめる。明治30年代~40年代に関しては、麻生商店本店と若松出張所の帳簿が豊富に残されている。それらの数値を分析することなしに、麻生商店の石炭販売全体を理解することはできない。同店の経営動向をおさえたうえで、新規販売先の開拓にともなう輸送問題の発生、当該期の石炭問屋の役割について考察していく。 また、石炭需給(市場)の変化との関連において、瀬戸内海における塩田経営資料を確認する必要がある。加えて、瀬戸内海沿岸は帆船の船主が多数存在した地域でもあり、それら船主関係資料も探索する予定である。上述の三池炭に関する分析、麻生商店に関する資料収集・分析とあわせて、広島・愛媛・香川県での調査をすすめていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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