本研究の目的は、独立直前のインド政庁のイギリス本国政府に対する相対的独自性について探究することである。具体的には、1939年に開催された第3次日印会商と1944年に開催された連合国通貨金融会議を事例として、インド政庁の能力―国内諸利害の調整能力および対外的経済関係への対応能力―に焦点を当てて考察する。そして、インドの脱植民地化について再検討を加え、脱植民地化経験後のインドの経済成長過程の歴史的背景の一端を明らかにすることが、本研究の長期的・最終的な目標である。 最終年度である平成26年度は、平成24年度および平成25年度に収集した一次史料の読解作業を進めた。そして平成27年1月30日に行われた経済・政治外交史研究会において「1930~40年代におけるインドの対応:イギリス・アメリカ・日本との経済関係において」というタイトルで研究報告を行った。この研究報告では、1930年代末から1940年代前半にかけて、インドの貿易において存在感を増してきたアメリカがインドにとってどのような経済的位置づけであったのか、また将来的にどのような位置づけとなりうると考えられていたのか、について考察した。 1930年代から40年代のインド貿易において、とくに第二次世界大戦開始後には対日本貿易がほぼ断絶といってよいほど激減しており、輸出入双方においてアメリカが占める割合が増大していた。このような状況のなかで、インド政庁の要請によってアメリカ視察が実現し、インドの対アメリカ貿易の発展の可能性が探られていた。また、1944年7月にアメリカのブレトン・ウッズにおいて連合国通貨金融会議が開催されたが、インドも代表団を結成してこの会議に参加し、IMFに加盟することの利益と義務、また加盟しないことの自由と不利益について多角的に検討していた。
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