研究課題/領域番号 |
24730297
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
森 宜人 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (10401671)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ドイツ / ハンブルク |
研究概要 |
本研究の目的は、第一次大戦期ドイツにおいて都市失業扶助が普及し得た歴史的コンテクストとその成果・限界を明らかにし、総力戦体制と「社会都市」の関係性を解明することである。この研究を通じて、これまで専ら国家的介入の本格化としてのみ捉えられてきた総力戦体制を都市史の視角から問い直すとともに、「社会国家」形成の重層的なプロセスを明らかにし、「長い20世紀」の歴史を把握する上での都市史研究の意義を問いかけることを目指す。 平成24年度はまず、「社会都市」と失業問題の関係についてこれまで行ってきた研究の再整理を行った。その成果は、平成24年6月に京都大学で開催された近代社会研究会第242回例会において、「世紀転換期ドイツにおける都市失業保険―『社会都市』論の観点を中心に―」として報告し、多様な観点からフィードバックを得ることができた。 次いで、1914年9月に公刊された『ドイツ都市会議本部報告書』第4巻第18/19号に収められている「ドイツ都市会議調査報告:大戦勃発に起因する諸都市の給付事業についての概観―」の翻訳を行い、資料紹介として『経済系』(関東学院大学)第252巻に発表した。この翻訳・紹介作業は、各都市で実行に移された失業扶助の全体像の把握に大きく寄与した。 また、平成24年8月および平成25年2月にはドイツに赴き、ハンブルク国立図書館およびハンブルク州立公文書館において、今後の研究の遂行に必要な未公刊一次史料および各種刊行史料の調査・収集を行ってきた。平成24年度の後半は、これら史料の整理・分析を進めるとともに、その成果の一部を平成24年12月に一橋大学で開催された社会史研究会において、「第1次世界大戦と失業問題―総力戦体制下のドイツ『社会都市』―」として報告し、今後の研究の方向性を整理することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、上記の課題を解明するために、次の3つの視角を設定した:(1)失業状況と都市失業扶助の運営状況の総合的把握、(2)失業扶助をめぐる政策思想の検証、(3)個別都市の事例分析。 このうち(1)と(2)については、『経済系』に発表した資料紹介によって、ほぼ達成されたといえる。 (3)については、平成24年度の史料収集で、主にハンブルクの事例について多くの史料を集めることができた。これらの史料について平成24年度後半より整理・分析を進めた結果、ハンブルクでの失業扶助の実態について、ほぼその概要をつかむことができた。 以上より、本研究はまだ道半ばの状況にあるとはいえ、平成24年度の活動を通じて、当初設定した研究視角にそって研究を進める目途をつけることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の前半は、上記研究視角(3)の中でも特にハンブルクの事例についての研究を進めることに専念する。その成果については、平成25年6月1日に東京大学で開催される社会経済史学会第82回全国大会の自由論題報告「第1次世界大戦期ドイツの失業扶助―ハンブルクを事例として―」、として報告することが決定している。同報告でのフィードバックをふまえた上で、平成25年8月に再びドイツに赴き、ハンブルクを中心に史料収集を行い、今後必要となる史料の補完を行う。その後、平成25年度後半には、上記研究視角(1)と(2)の見直しを行いつつ、ハンブルクの事例に関する研究成果を学術誌に投稿するための論文に仕上げると共に、研究の最終的な取りまとめを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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