研究概要 |
本研究は,持続可能性(Sustainability)の観点から,近代イギリスにおける有機性廃棄物の肥料利用の実態を解明するものである。研究の成果としては,特に,都市(ロンドン,エディンバラならびに地方都市)の屎尿ならびに沿岸地域(ノーフォーク州)での海藻等の肥料利用について,その時期・回収方法・金額等が判断できる史料を収集することができた。これらの史料は,都市から農村,または,海域から陸域への栄養分(リンを含む)の循環的利用が実現していたことを示唆するものであり,現在,その史料の分析を進めている。また,現在の有機性廃棄物(下水汚泥)の資源化政策についても関係者から聞き取りを行い,その歴史的事例の現代的意義についても考察した。 平成25年度の実施計画については,平成24年度末に若干の修正を行ったが,その計画に従って,①イギリスでの追加的な資料収集と文献考証,②研究会等での発表,③論文の執筆を行った。①については,8月に,Norfolk Record Office,The National Archives, National Library of Scotlandにてそれぞれ追加的な資料収集を実施し,文献の考証を引き続き進めている。②については,「廃棄物の環境史」(越境する歴史学研究会,於京都大学人文科学研究所),「廃棄物の環境経済史-イギリスの海・都市・農村(1793-1880年)―」(社会経済史学会近畿部会例会,於大阪学院大学)の2件の報告を行い,助言を得た。③については,紀要「下水汚泥の資源化にみる意識改革」が刊行され,図書原稿「英国におけるバイオソリッドと嫌気性発酵戦略」が刊行予定(校正中)である。また,図書原稿「リンの循環と環境問題(仮題)」を執筆中(2015年刊行予定)である。
|