本研究は、18世紀における南アジアならびに東南アジアでの熱帯産品輸出経済の萌芽・形成を分析するものである。具体的には、ジャワ、ベンガル、コロマンデル、グジャラートにおける砂糖、綿布、アヘンなどの栽培と生産を検討し、とくに生産地の開発と労働組織、集荷や輸出といった実態を、オランダ東インド会社文書を利用することで考察する。以上の研究により、東アジアとは異なった発展経路をもつ南・東南アジア経済を歴史的に解明し、もって、実証的に近代アジア・世界経済における国際分業体制下にローカルな熱帯産品輸出経済がいかに形成されたかを明らかにすることで、実証的なグローバル・ヒストリーの議論の下地ともなりうる研究を目指したものである。 第3年度について、その前期には、当初の計画通り、昨年度後半に行った研究事項(労働管理、技術導入ならびに集荷等を担った現地仲介商人の分析)につき、昨年度中に取り扱わなかったグジャラートとジャワについての分析を行った。また、年度後半には、これまで研究の総括として、オランダ国立公文書館、英国図書館、インドネシア国立公文書館での収集史料を再度見直し、総合的に当時の南・東南アジア経済を国際分業の中に位置づける分析を実施した。 成果としては、本研究に関連する副産物的な成果も含めて、論文2件、口頭報告7件(うち国際会議での口頭報告3件)、分担執筆の図書4件(うち英文2件)がある。さらに、チェアーとして携わった国際会議あるいは国際学会のパネル・ディスカッション・セッションが2件ある。
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