研究課題/領域番号 |
24730303
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 帝京大学短期大学 |
研究代表者 |
山口 育人 帝京大学短期大学, その他部局等, 講師 (20378491)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際通貨制度史 |
研究概要 |
本年度は、第二次世界大戦後のスターリングエリアの展開について、1940年代から50年代半ばまでを主な対象時期として研究を進めた。①研究文献の入手と検討、②イギリス国立公文書館での資料調査・収集と分析を行った。 1940年代後半から50年代のスターリングエリアの展開について、次のような理解に達した。 第二次世界大戦後の深刻なドル不足状況において、対ドル差別的なスターリングシステムを維持することでイギリス・コモンウェルス諸国を中心とする世界経済の活動を支え、また交換性回復に向けてエリアのドル収支改善が追求されたことが、対象時期のスターリングエリアの展開の基本的性格であった。オーストラリアやインドなどコモンウェルス諸国の開発資金需要に応えつつ、もう一方でスターリングシステムの安定とドル収支改善のための負担を課すというナローパスを進むことがスターリングエリア運営の実態であったことを確認した。またスターリングの安定にかかる負担の多くが、アメリカの援助と植民地の金融的な犠牲(スターリング残高の押しつけ)によったことを確認した。 1940年代後半から50年代半ばにかけてのスターリングエリアの展開、ならびにイギリス政府のスターリング政策を、1951年10月に成立したチャーチル保守党内閣のスターリング政策ならびに対西ヨーロッパ経済協力政策の分析を通して整理した論考を発表した(「第二次チャーチル保守党政権とスターリング」『紀要(帝京大学短期大学)』第33号、2013年2月、85~106頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・本年度、分析対象とした時期の検討に必要な文献、資料はほとんど入手・検討できた。 ・研究計画において本年度の課題とした内容について、上記したとおり論文を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、当初の研究実施計画に従って、1950年代末から60年代のスターリングエリアの展開について検討する。 具体的には次のような内容を検討する計画である。ドル不足解消や1958年の交換性回復によってスターリングエリアの通貨グループとしての存在意義はわずかになるとも考えられ、また60年代に入るころからイギリス政府内ではスターリングの準備通貨としての役割が重荷であるとの認識が広まりはじめた。しかし国際通貨スターリングの退場にはさらに10年を必要とし、一定のまとまりをもつスターリングエリアが継続した。それは、発展途上地域への援助・資金問題が重要性を増すなかで、スターリングエリアの行方が英米関係において主要テーマとなり、また国際経済上の大きな関心事になったことを意味した。冷戦の第三世界への拡大や発展途上国への援助・資金問題の争点化といった1950年代末から60年代における国際政治・経済関係の展開のなかで、スターリングエリアのあり方、国際通貨スターリングの将来展望がいかに議論され、またイギリスやスターリングエリア諸国の政策がどのように展開したのか検討する。 上記の内容の検討を進めるため、研究文献の検討とともに、イギリス国立公文書館、イングランド銀行、オーストラリア国立公文書館の資料の調査・分析を進める。また、研究結果を論文「国際経済構造の展開とスターリングシステムの変容――1950年代末~1960年代初頭(仮題)」としてまとめ、公表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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