平成26年度は,これまでの研究によって明らかにしてきた知見を公開すべく,以下の2つの作業を遂行した. 第1に,2014年6月に開催された,組織学会研究発表大会における学会報告である.同報告内では,ワークプレイスの物理的な特徴(空間設計)と社会的な特徴(同一のワークプレイスを使用する組織成員が有するコミュニケーション行動への見解)が,ワークプレイス内での「コミュニケーション行動の容易さ」に影響を与えることを明らかにした. また,第2にこれまでの研究の到達点をまとめて公開すべく,書籍化への準備を進めた.海外での2010年以降の研究知見の渉猟が未着手であるが,その他には必要となる内容についての記述はほぼ完了している. さらに,ワークプレイス内でのコミュニケーションを通じた,問題解決やイノベーションの創出を明らかにすべく,参与観察もしくはインタビュー等の定性的調査が可能なリサーチ・サイトを探索することとした.その結果,近年,注目を集めつつある,コワーキングスペースに注目し,定性的調査を進めることとした.定性的調査に先立って,平成26年度は,コワーキングスペースの実態を把握し,定性的調査の対象を抽出するために,国内のほぼ全数のスペースを対象とした定量的研究を行った.この結果にもとづき,平成27年度より定性的調査を開始する予定である. このように研究対象が企業のワークプレイスのみならずコワーキングスペースも射程とすることとしたため,本研究課題の拡張を企図し,基盤研究(C)に前年度申請をした.結果,研究課題が採択されたため,本研究課題を1年前倒して終了させ,平成27年度からはコワーキングスペースを主たる対象とし,企業のワークプレイスを対象とした研究と比較しながら,開放的な空間もしくは〈たまり場〉でのコミュニケーションを媒介としたイノベーション生成プロセスに着目をし,研究活動を進める予定である.
|