研究課題/領域番号 |
24730306
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高浦 康有 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (00340216)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 障害マネジメント |
研究実績の概要 |
本研究「障害マネジメントの災害時モデル構築に関する研究」では、障害マネジメント(disability management)の概念にもとづき、災害時の、障害のある社員へのケア、職場復帰支援等の雇用管理の方法について考察し、モデル構築と提言を行うことを目的としている。 本年度は、障害マネジメントの理論的基礎を探究することとし、近年の雇用情勢との関連から、ニート・ひきこもりの若者層を生み出すに至っている日本企業の人事評価視点について批判的に検討を行った。その中で、東大の本田由紀氏が唱える「ハイパー・メリトクラシー(超・業績主義)」化の概念に立脚し、日本企業の過剰なまでの能力要請が若者に圧力をもたらし、努力の方向を見出し得ないまま求職活動に失敗するなかで、就労意欲が減退したり、適応障害につながるようなさまざまな問題を引き起こしているという見方を提示した。これら論考は「ニート・ひきこもりの現状と国内企業の支援策」として、日本学術振興会経営問題第108委員会(第390回本会議)にて報告され(2015.2.8、北九州市立大学)、同委員会発行の機関誌『経営問題』第7号(2015.7、pp29-39)に掲載される見込みである(なお本稿は拙稿「ニート、ひきこもりの就労を支援する会社」(水尾順一、田中宏司編『安心・安全、絆の経営:CSRと人権・労働』白桃書房, 2013.3)に一部加筆等の編集を加えて掲載するものである)。 さらに国際会議Australia's Disability Employment Conference(2014.8ゴールドコースト)に参加したことで、障害マネジメントの環太平洋圏の動向や政策上・実務上の課題について詳細に情報収集ができ、日本国内と海外の事例との異同について把握することが可能となり、本研究のモデル構築に大いに資する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
災害時のモデル構築を最終目的としているところ、基礎理論的な探求はある程度なし得たものの、被災企業の障害マネジメントについてより実態的な解明が必要である。国際的な研究動向にも注目しながら、これまでの事例研究等の知見をより活かす形で体系的なとりまとめを行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
Australia's Disability Employment Conference等の国内外の研究会議に参加し、研究領域の最新動向の把握に努めるほか、引き続き本研究科地域イノベーション研究センターの復興調査研究プロジェクトや地域発イノベーション事例調査プロジェクトに参加することを通じて、障害マネジメントと被災者自立の関連についてテーマを深掘りしていきたい。また科研費基盤研究(B)「震災復興下における当事者主導型ソーシャルイノベーションの研究」(研究代表者:大滝精一)の研究分担者として合同研究・調査で得られた知見を本研究にフィードバックしていきたい。
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