研究課題/領域番号 |
24730307
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小阪 玄次郎 上智大学, 経済学部, 助教 (90582297)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | イノベーション / 技術経営 / 研究開発組織 / マルチレベル / 特許 |
研究概要 |
平成24年度は、企業がイノベーションに適応するうえでの研究開発組織のあり方を探索するために、先行研究のレビューと、今後の分析の端緒としての単一事例分析を行った。 まず先行研究のレビューでは、イノベーションを生み出す企業や個人の要因として既存研究がどのようなものに注目してきたのかを概観した。既存研究を大まかに分類すると、産業レベル、企業レベル、集団レベル、個人レベルの4つの要因を扱ってきている。それぞれについてこれまでに行われてきた研究を検討した結果として、既存研究においては個別の分析レベルを横断した相互作用については十分に議論されておらず、複数の分析単位を同時に観察する研究を行う必要性が明らかになった。 次に、今後の分析の端緒として蛍光表示管業界を対象とした事例研究を行った。事例研究からは、イノベーションに伴う新旧企業の競争地位の交代という企業レベルで見た事象が、ときに旧来の企業からのスピンアウトによる新規企業の誕生によってもたらされていることを確認した。また、その結果として研究者個人のレベルで見ると新旧企業の間では相互に人的ネットワークが存在しており、このネットワークが様々な技術的機会の存在する中で技術を方向づけ事業化することに寄与していることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、研究計画の初年度の活動として、先行研究の検討と、予備的な事例研究を行うことができた。これらの作業は次年度以降に行う特許データをもとにした研究開発組織の分析の土台となるというだけではなく、先行研究レビューについては雑誌掲載、事例研究については欧米での学会発表を行っており、一定の成果を達成したと考えている。 インタビュー調査による質的情報の充実は次年度以降の課題となるが、既に特許データによる量的な分析は進行しつつあり、研究はおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、セラミックコンデンサ業界の3社を対象として、それぞれの研究開発組織の形態と開発成果について特許データによる詳細な分析を加えていく。企業レベル・集団レベル・個人レベルにわたるデータベースを整理し、同時に、インタビュー調査による質的情報の充実を図る。 また、本研究で対象とする3社のうちTDKに関しては、セラミックコンデンサ事業ばかりでなく、磁気ヘッド事業についても注目に値すると考えている。既存研究では、TDKの当該事業についてイノベーションに適応するための組織的特徴があることが既に示唆されているからである。このため、TDKの磁気ヘッド事業についても、パイロット・ケースとして特許データを中心とした追加的な分析を加える予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初申請の通り、次年度研究費の主たる使途は海外学会における研究発表のための旅費である。具体的にはイギリスにおけるR&D Management Conferenceでの研究発表を6月末に予定している。その他、海外学会発表のための英文校正や、インタビュー調査のための旅費に予算の1~2割程度を割り当てる予定である。
|