研究課題/領域番号 |
24730307
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小阪 玄次郎 上智大学, 経済学部, 准教授 (90582297)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イノベーション / 技術経営 / 研究開発組織 / マルチレベル / 特許 |
研究実績の概要 |
平成26年度は企業がイノベーションに適応するうえでの研究開発組織のあり方を探索するため、前年度に引き続き、先行研究のレビューと、事例分析を進めた。 先行研究のレビューでは、イノベーションの中でもとくに製品アーキテクチャの変化をともなうイノベーションに注目した。製品アーキテクチャが変化すると、部品メーカーが製品性能の実現のために他の部品と緊密な相互調整を行うべき範囲が変わる。そのため、製品開発を効果的に行ううえでは、製品アーキテクチャと一致するように組織の境界を適宜伸縮させるべきだと近年まで一貫して考えられてきている。また、組織の境界を変えて対応するのではなく、むしろ自社の事業領域を越えて広範な技術情報を蓄積し、知識の境界を伸縮させることで対応するのが効果的とする議論も存在する。しかしながら一連の先行研究では、製品アーキテクチャの変化に対応できる技術蓄積を行うために、具体的にいかなる開発体制が適切であるのかは明らかにされていないことが確認された。 このレビューをふまえ、TDKの磁気ヘッド事業の事例分析を進めた。特許情報に基づき、①組織レベル、②集団レベル、③個人レベル、という3つの分析単位を設定し、開発組織のあり方を明らかにする作業を行った。分析の結果、部品メーカーが自社部品の事業領域を超えて知識獲得を行ううえで、異なる部品技術者間の連携が必ずしも密であるわけではない、ということが示された。同時に、部品横断的に知識を保有する少数のスター技術者が存在しており、彼らが異なる部品間の技術的知識を統合する役割を担っていることも推察された。そのようなスター技術者の特徴は、材料や製造プロセスへ関与しているということであった。異なる部品間でも材料や製造技術の一部は共有されている場合があり、その共有部分への深い理解が部品間を調整・統合するための知識の形成にとって重要であることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は、それまでの研究成果をもとにして国際学会発表を行う予定であった。しかしながらそれまで利用していた特許データベースでは分析に制約があったため、新規のデータベースを利用し再度の分析を行う必要が生じた。このため国内学会発表および論文投稿を平成27年度に行うように目標を変更した。平成27年6月に開催される組織学会研究発表大会にて発表を行うことが確定している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の達成のため、年度内の学会発表および論文投稿を目指す。 先行研究レビューと特許データによる分析はおおむね完了しつつあるので、インタビュー調査により質的情報の強化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
従来使用していた特許情報のデータベースで分析に制約を生じたため、使用データベースを新規に契約して再度の分析を行った。このため、平成26年度中の国際学会発表を行わず、そこに充当予定であった旅費と、データベース使用料の差額分が次年度使用額として発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画の達成のため、分析を補強すべくインタビュー調査を行う。そのための旅費に次年度使用額を充てる。
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