研究課題/領域番号 |
24730309
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
吉永 崇史 富山大学, 学生支援センター, 特命准教授 (40467121)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 経営組織 / 自閉症スペクトラム |
研究概要 |
本研究の目的は、社会性コミュニケーションや社会性想像力の点で障害があり、企業での就労が困難とされる高機能自閉症スペクトラムの人(以下、当事者)への職場でのマネジメントの在り方を明らかにすることである。その目的の下、本年度は「マネジャーが当事者の特性に基づく独特かつ業務上有効なものの見方をコミュニケーションを通じて発見していくプロセス」に焦点を当てて、株式会社Kaienが実施している当事者を対象とした職業訓練プログラムを活用したアクション・リサーチを行った。 アクション・リサーチでは、当事者6名、マネジャー役を担当する当職業訓練プログラム講師2名、プログラム支援スタッフ2名へのインタビュー調査を行った。当調査で得られたテクストの質的分析では、以下の2点が明らかになった。1)マネジャーは、積極的に業務上分からないことを質問できる当事者にスムーズに対応しつつ、質問のやり取りの違和感を通じて、当事者の特性に基づく「書かれてあることに忠実であろうとする」「何事も客観的に物事を捉える」「微細な変化に鋭敏である」といった当事者特有のものの見方を把握していた。2)自分の意思をその場で他者に伝えるのが困難で、質問に対する応答が遅い当事者に対しては、マネジャーは戸惑いながらも、支援スタッフに協力を仰いだり、日報等のテキスト情報から当事者の意思を読み取ろうと試みたり、スムーズな会話を期待せずに状況から予測したことに基づく話しかけを試みていた。 上記に加えて、当事者の能力を発揮させるために必要な組織マネジメント上の取組みについて、以下の4点が明らかになりつつある。1)職場環境に慣れない中での緊張感を和らげる。2)やるべきことを理解しながらも実行に移せない状況への対応。3)業務に支障のでない範囲での苦手なコミュニケーション方法の回避。4)当事者の自主性や周囲とのコミュニケーションへの配慮。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、当事者およびそのマネジャーを対象としたアクション・リサーチを計画・実施したことで、本年度の目標であった「マネジャーが当事者の特性に基づく独特かつ業務上有効なものの見方をコミュニケーションを通じて発見していくプロセス」について明らかにすることができた。さらに、今後の目標であった当事者の能力を発揮させるために必要な組織マネジメント上の取組みについても、その一部を明らかにすることができた。 一方、もう1つの目的であった「マネジャーが当事者と共に成長していることに気づくプロセス」については、これまで実施してきた調査結果の質的分析を行うことで早急に進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査に基づく分析内容を再点検し、「マネジャーが当事者の特性に基づく独特かつ業務上有効なものの見方をコミュニケーションを通じて発見していくプロセス」および「マネジャーが当事者と共に成長していることに気づくプロセス」について、更に詳細な分析を積み重ねた上で、知見の構造化を行う必要がある。さらに、今年度得られた知見を活用しつつ、今後の目標である「当事者の能力を発揮させるために経営組織全体の知識共有・知識創造を誘発するためのプロセス」を明らかにするための調査計画立案・実行へと発展させていく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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