研究課題/領域番号 |
24730309
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
吉永 崇史 横浜市立大学, 総合科学部, 准教授 (40467121)
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キーワード | 経営組織 / 自閉症スペクトラム / 知識創造 |
研究概要 |
本研究の目的は、社会性コミュニケーションや社会性想像力等に障害があるために、企業での就労が困難とされる高機能自閉症スペクトラムの人(以下、当事者)の職場でのマネジメントの在り方を明らかにすることである。その目的の下で、本年度は、当事者を継続的に雇用している企業の協力を得て、当該企業に在籍する当事者1名、マネジャー1名、および当事者と同じ業務チームに所属する社員1名を対象としたインタビュー調査を行った。当調査は、以下の2つのリサーチ・クエスチョンに基づいて行われた。1)当事者の能力を活かすための組織的な取り組みとは何か、2)当事者が経営組織全体の知識創造活動に参画できるために必要なことは何か。当調査で得られたテクスト分析の結果、組織的知識創造の観点からの当事者のマネジメント・プロセスについて、以下のように明らかになりつつある。1)安定的な雇用環境の整備を目指して労務管理サイドと現場サイドとが連携して当事者の職場適応を支える、2)当事者が安心して業務ができる物理的な職場環境を整備する、3)当事者の卓越した能力について探求し経営組織の戦略的課題の解決につながる業務とのマッチングを図る、4)当事者との関係性を築くことが苦にならない組織内メンバーを見つける、5)当事者のみならず当事者と一緒に業務を行うチーム・メンバーを同時に支える、6)当事者の業務上の成果を当事者が所属する業務チームが達成する成果に不可欠なものとして意味づけることで当事者の社内での評価を確立する。上記のプロセスから、当事者を知識創造活動に参画させるためには、当事者の物理面および人間関係面での職場環境の整備を行いつつ、当事者が従事する業務を戦略的にデザインし、その有効性を意味づけるマネジメントの必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であった「当事者の能力を発揮させるために経営組織全体の知識創造を誘発するプロセス」を明らかにするためのインタビュー調査および調査で得られたテクスト・データの質的分析を実施することができた。その一方で、当研究には以下の2つの課題があるため、更なる調査および分析が必要である。1)これまでの調査で得られたテクスト・データを対象としたグラウンデッド・セオリー・アプローチ等の質的分析手法を用いた精緻な分析、2)別の経営組織で行われているマネジメント実践との比較を通じたマネジメント・プロセスの検証
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本年度に実施した調査で明らかになりつつある組織的知識創造の観点からの当事者のマネジメント・プロセスについての分析をさらに進めることで、グラウンデッド・セオリーを構築していく。さらに、当事者のみで構成された業務チームに対するマネジメントを試みている企業とのインタビュー調査を実施することで、当事者の業務活動だけではなく、当事者が所属する業務チームの生産性向上の観点や、当事者の安定的な就労を図る上で急速に課題となりつつある当事者のキャリア開発の観点を加えた分析を行う。さらに、これまでの研究で明らかにしてきた「マネジャーが当事者の特性に基づく独特かつ業務上有効なものの見方をコミュニケーションを通じて発見していくプロセス」との統合を試みることで、当事者の能力を経営組織の知識創造活動に結び付けるための総合的なマネジメント・プロセス・モデルを開発する。
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