研究課題/領域番号 |
24730310
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
白肌 邦生 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 准教授 (60550225)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換(アメリカ) / サービス / 持続可能性 / 価値共創 |
研究概要 |
本研究の目的は,サービス経済化の成熟を背景に,サービス活動を持続可能なものにするための理論枠組みを構築することにある.具体的には,サービスの提供者・受容者,そして自然という三者を想定し,その間の価値共創モデルおよびその促進要因を構築・分析することを目指している.平成24年度は,三者間価値共創に必要な第三の参加者である自然の声を代弁し,的確にその様子をモニタリングしつつその保全や向上に貢献できる主体およびその特徴を分析してきた.具体的には都市の分析を中心に行い,東京都のビル提供者と利用者の共創から電力使用量を削減する取り組みはもとより,UN-Habitatが提供している持続可能性に貢献している都市の成功例データベースに登録されている都市の特徴を抽出した.ウィーン市のEco-business planの取り組みやベルリン市のStEPKLimaプロジェクトに関する空港跡地の活用の事例がここに含まれる.これにより,サービス提供者はどの活動主体をどのように組み込んで三者間価値共創を設計しているかを整理することができた.この成果は,American Marketing Association SERVSIG国際会議やThe 13th International Symposium on Knowledge and Systems Sciencesでの研究報告やベトナム・ベトナム国家大学や中国・大連理工大学における研究ワークショップでの報告に結実している.自然を取り込んだ価値共創フレームは申請者らのオリジナルなコンセプトであり,国際的な注目度も高い.本年度の研究活動はこのフレームから見いだされた独自の着眼を基に,これまでの先進的ケースの(未だ見いだされていなかった)特徴を分析したもので重要性は高い.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に照らした研究タスク群の中には,三者間価値共創の先駆的な事例分析と個別の深堀調査が含まれていた.既に都市を中心に先駆事例の分析は達成されつつあるものの,その深堀については更なる努力が必要である.研究の問いを明確にし,調査票として具体化する作業を通じて,三者間関係における各主体の活動誘因や持続のインセンティブの分析を進めていきたい.公開情報を基に分析しているため,これに準じた調査として対象に接近することは十分に可能であり,平成25年に具体的に研究を進めていく.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,三者間価値共創の結果としての価値分析を行う.三者間価値共創はどのような社会状況で成立し,何を参加者に与え,その後の社会にどう影響したかを調査する.具体的に,三者間価値共創結果と社会的文脈をキーワードに,価値共創に関わっていた主体を対象に(i) どのような価値を最終的に得たか,(ii)当時の社会状況をどのように認識し,(iii)なぜその価値共創を始めたのか,について記述を中心とする調査を行う.これと並行して新聞や雑誌の記事を対象に,社会的背景を記述する言語を抽出・クラスタリングして社会的文脈を定義し,その経年変化を分析する.そして,アンケート調査結果と社会的文脈のダイナミクスを対応付けていくことでタスクを遂行する.その後,実践としての持続可能なサービスプロセス設計手法の試作開発として,サービスの持続可能性を考える上での三者間価値共創モデルをサービスプロセス設計に応用し,実際に適用した結果と照合したうえで実効性の観点からモデルの洗練を行う.サービスプロセス中にサービス提供者と受容者が自然資源を考慮に入れ,サービス価値の共創を通じて環境負荷の低減およびエコシステムサービスを最大化するようなサービスプロセス設計技法を試作する.そして,教育現場での実習を通じて実践し,そこで得られたフィードバックを基にモデルを洗練させる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,年度前半において調査票作業を加速させ,三者間関係における各主体の活動誘因や持続のインセンティブの分析にかかる調査に研究費を使用する.年度中期には実際に三者間価値共創の先進的現場観察をし,関与者へのインタビューを実施することを計画している.年度後期は価値共創を促進させるツール開発に展開させるために,関連する実験活動に研究費を使用することを計画している.なお,平成24年度に発生した未使用額は当該年度に実施した公開情報に基づく事例調査の活動が長引いたことにより,旅費を使った現地調査が計画よりも少なかったことに起因している.
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