本研究の目的は,自然資源の持続可能性に貢献するサービス活動のための理論枠組みを構築することにある.具体的には,サービスの提供者・受容者,そして自然という3主体を想定し,その間の価値共創およびその促進要因を構築・分析することを目指している. 平成24年度は,三者間価値共創に必要な第三の参加者である自然の声を代弁し,的確にその保全や向上に貢献できる主体およびその特徴を分析してきた.この過程で,東京都のビル提供者と利用者の共創から電力使用量を削減する取り組みや,UN-Habitatのデータベース分析を基に,ウィーン市のEco-business planの取り組みやベルリン市のStEPKLimaプロジェクトの先進事例を三者間価値共創の枠組みで説明することができた. 平成25年度は,三者間価値共創モデルをもとに,石川県小松市の里山活性化への応用や都市の廃棄物問題に展開することでモデル洗練をしてきた.この間,当初予定していた「社会的文脈変化が自然志向のサービス活動に与えた影響」に関する分析については,若干の計画修正を行った.それは,日本固有の,人間と自然の良好な関係性の基に持続されてきた「里山」のコンセプトが,自らが提案してきた三者間価値共創をより高度に説明する上で深く分析する必要があると確信したためである.里山へのフィールドワークや関係者へのヒアリングを通じて,里山の概念が,極めて地域に閉じられたサービス関係である反面,提案してきた三者間価値共創はローカル・グローバルを含めより広範に自然と人間同士の価値共創を分析できるモデルであることを結論付けるに至っている. こうした取り組みの成果は,AMASERVSIG国際会議や技術経営の国際会議PICMETや海外シンポジウムでの研究報告採録に結実している.自然を取り込んだ価値共創フレームは申請者らのオリジナルなコンセプトであり,国際的な注目度も高い.
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