研究課題/領域番号 |
24730312
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
江夏 幾多郎 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (00508525)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 組織均衡論 / 状況的解釈 / 希望 / 決断としての受容 / 承認 |
研究概要 |
今年度は,第一に,実践概念に関する広範な社会科学の文献を渉猟しながら,人事管理という活動についての,理論的な定式化を試みた。すなわち人事管理とは,相互参照的でありつつ固有の利害を持つ人々が共に準拠することが意図された枠組み(e.g. 人事制度,人事ポリシー,人材像)を媒介として,複数の利害の間の関係を調整することである。この枠組みは,当事者の行為に一定の枠組みを化しつつ,完全に規定することはないために,複数利害の共存(≠統一)や協働体系(=組織)の持続性や柔軟性を可能にする。 第二に,そうした包括的観点を前提とし,日本企業と在中国の日系企業における,評価制度・報酬制度の運用実態についての調査研究を行った。人事担当者が当初企図していた機能が実現していない中でも,少なくない従業員が処遇実態についての定義や評価を事後的に編成し,受容していた。論理的には従業員はあらゆる処遇を受容することができるが,現実的には受容の蓋然性は「ケース・バイ・ケース」となる。蓋然性を高める要素は,人事制度やそれに直接的に関連したコミュニケーションというよりは,従業員と周囲の日常業務上の人間関係,特にそこにおける相互承認の機制に多く潜んでいる。 一連の検討を通じ,人事を管理するという経営者や人事担当者の経験,管理されるという従業員の経験を当事者にとって有効なものとするのは,特定の管理の形式・方針を見出し,活用・墨守すること「ではない」ことが明らかになった。利害関係者が共に尊重すべき管理の形式・方針が「あえて」選ばれ,選ばれ直すべきものであることを研究者が見逃す場合,実務家に対して不適切な示唆を与えかねない。 後述のように,2012年度中に具体的な研究成果は生み出せていない。しかし,第二のテーマに関した論文を,『国民経済雑誌』208巻第1号に掲載される依頼論文として,2012年度中に執筆し,提出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
具体的な研究成果が2012年度中に公刊されることを目指していたが,翌年度に公刊されることになる研究成果を産出するにとどまったため。
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今後の研究の推進方策 |
理論的検討,経験的研究をさらに進め,応募者の研究全体を取りまとめるため,本科研の助成を受けるに参加する前に行ってきた研究成果についても再検討,改定の作業を行う。その成果を書籍にまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品については,データ分析のためのソフトウェアのアップデートのために一定の費用を有する。それ以外については,現時点では想定していない。 国外を含め,情報収集や調査結果のフィードバックのための出張を数度行うことになると考えられる。研究の多くが旅費に充てられることになると考えられる。
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