これまでの研究経過を踏まえ,3つの企業の1200人余りの従業員と対象に,人事評価・報酬の結果,それらについての納得性,あるいはその関係を仲介すると考えられる人事管理ないしはそれ以外の要因に関する質問紙調査を行った。 この調査の特徴,人事管理領域における組織的正義(Organizational Justice)論に基づく研究としての独自性は,以下のとおりである。第一に,組織的正義に関する先行研究で確立された質問項目の妥当性を,筆者が行ってきたフィールド調査に基づいて再度検討し,人事制度の設計・運用の実態に即した質問項目に編み直したこと。第二に,人事評価への従業員の納得感,公正感,満足感の異質性に配慮したこと。第三に,報酬および人事評価(結果および結果を導出する経過)とそれらへの反応の間の関係を仲介すると考えられる,職務特性や評価者との日常的な関係,さらには所属組織や事故についての将来展望についても質問項目を設け,「処遇の受容」という知覚が状況の中でいかに形成されるかについてのメカニズム解明を目指したこと。 このように,調査内容が野心的であったため,研究論文,ないしは著書をまとめるには至らなかった。しかし,そうした活動の内容が,並行して執筆された人事評価に関する一般向けの書籍にはふんだんに反映された。調査の結果に関しては,平成27年度に取りまとめる予定であり,現時点では,データ分析,および分析結果に関する調査協力企業との意見交換を行っている。
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