心理的契約は組織と個人の間をつなぎ、双方にとってお互いの行為を予測可能にするものとして注目されてきた。本研究ではこの点をさらに深め、心理的契約が組織と個人の関わり合いのダイナミズムの中でどう調整されるかという点に注目した。具体的な成果は幾つかある。第一に、日本企業の従業員と組織の間には深刻な認識のズレが存在すること、第二に、そうした認識のズレの影響は、採用段階におけるお互いの期待の明確化によって軽減されること、第三に、心理的契約の相互調整は組織側個人側双方の事情によって引き起こされること、といった点である。そして最後に、健全な心理的契約の形成には、採用段階が決定的に重要であることもわかった。
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