タイにおける製造業の産業集積では、日系自動車メーカーを中心として、多数の日系企業からなるサプライヤーシステムが形成されている。特にトヨタ系列では、日系企業をパートナーとして、日本型取引慣行(長期継続取引、系列取引)が忠実に再現されていた。その形成プロセスでは、サプライヤーを選別し、生産工程へ入り込んだ技術指導を通じて、サプライヤーの育成が行われていた(育成購買行動)。本研究の意義は、タイの産業集積は日系企業が主体となって形成されてきた、特異な産業集積であること、その背景には、日系自動車メーカーが育成購買行動を通じて、日本型取引慣行を海外でも展開しようとする傾向があることを明らかにした点である。
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