米国で2010年にテレワーク増進法が施行され、その中にテレワークに参加資格のある執行機関の雇用者とマネジャーを対象とした相互作用のトレーニングを行なわなければならない。それを踏まえ、本年度は2本の研究論文を執筆した。 1つ目の研究論文は、相互作用のトレーニングとはどのようなものかを種々参考文献より明らかにし、日本の在宅勤務に適用可能かを検討するものである。前者は、米国のテレワークトレーニング方法として、米国人事局(OPM)の作成したウェブ上でのトレーニング方法(OPMトレーニング)が主たる方法であることを明確にした。OPMトレーニングには、①テレワークの要点、②技術とプロセス、③テレワークに関連したトピック(パンデミックなど)の3分野について、雇用者とマネジャーに対する教育訓練を行なっている。日本の在宅勤務に適用可能かどうかについては、OPMトレーニングで日本の在宅勤務の課題を示唆している点と示唆していない点があった。示唆しているものが、管理問題、コミュニケーション課題、業務関連課題である。示唆していないものが、ITセキュリティ課題、境界浸透性課題、長時間労働課題であった。 2つ目の研究論文は、在宅勤務を実施している組織は、上記の6つの在宅勤務の課題の解消・緩和を目的とした教育訓練を行なっているのかを都道府県庁、市役所、東京23区役所にアンケート調査を送付し分析した。そこで明らかになったことは、①在宅勤務を行う団体でも教育訓練を行なう団体は多くない、②教育訓練を行なう団体では、文書による通知や説明会の手法がとられている。さらに、6つの在宅勤務の課題に対しては、在宅勤務者、管理者に対して公式のルールとして明記してある項目、在宅勤務者の裁量に任せている項目がある。在宅勤務を行う上での課題となっていることから、後者に関しては教育訓練手法を考える必要があると結論付けた。
|