研究課題/領域番号 |
24730325
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
土肥 将敦 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (50433157)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
メール便事業者の事例を中心とするフィールドリサーチの結果によって次の4点が確認された。第1に、当該社会的事業が、中心的な役割を果たすソーシャル・イノベーションの推進者や、現地社員、外部の専門家、支援者などのマルチステイクホルダーによる協働作業を通じて新しいアイデアが創出され、それらが事業化へと結び付けられていた点である。第2に、そうした通常出会うことのないステイクホルダーは、共通の「場」(当該社会的課題に関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を持続的な相互交流を通じて深めていくフィールド)を通して出会い、相互に学習する中で新たな事業アイデアを生み出していたという点である。第3に、企業外部のソーシャル・イノベーションの推進者により、障害者が活用しやすいように当該企業のメール便ビジネスモデルが再構築されていたという点である。これはソーシャル・ビジネスの普及を考えるにあたって、モデルの再構築や派生的なイノベーションの重要性を示唆している。第4に、こうしたソーシャル・イノベーションの実現によって、経済的・社会的な成果が達成されただけでなく、障害をもつ当事者たちの意識変化(従前に抱いていた自分自身への不安がビジネスにかかわることで自信へと変化)や当該企業社員の意識変化(従前に抱いていたステレオタイプな障害者観から企業戦力となるパートナーとしての認識へ変化)が生じており、新しい社会的価値が創出されている点である。こうした社会的事業にかかわるステイクホルダーの小さな変化の積み重ねが、ノーマライゼーションという社会的価値を地域に根付かせ、社会や制度のあり様を変革していくと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該事例におけるフィールド調査は予定通り進んでおり、今年度中に他の事例を交えた研究書が出版される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上記の平成24年度の研究成果として挙げたもののうち、ソーシャル・イノベーションの実現に伴う具体的な制度変容を定性的・定量的に実施していく。 とくに、ソーシャル・イノベーションの実現に伴い、障害をもつ当事者たちの意識変化(従前に抱いていた自分自身への不安がビジネスにかかわることで自信へと変化)や当該企業社員の意識変化(従前に抱いていたステレオタイプな障害者観から企業戦力となるパートナーとしての認識へ変化)が生じており、新しい社会的価値が創出されていると指摘したが、これらの定性・定量の両面におけるデータを収集してく。
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次年度の研究費の使用計画 |
インタビュー調査に伴う旅費、テープ起し代、その他これらにかかわるアルバイト謝金に用いる予定である。当該企業へのアンケート調査(費用)については、現在実施するか否かを含めて先方担当者と相談中である。
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