研究課題/領域番号 |
24730328
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
浦野 充洋 静岡県立大学, 経営情報学部, 助教 (10613614)
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キーワード | 制度派組織論 / 実践論的転回 / 制度的実践 |
研究概要 |
本研究の目的は、制度の創造や変革を担うリーダーシップを理論的・経験的に検討することにあった。具体的には(1)制度派組織論を中心とする文献レビューを通じた理論枠組みの構築と(2)経験的な調査研究を通じた実践的な含意の追求を目的としてきた。 こうした目的のもと(1)制度派組織論の文献レビューに関しては、初年度である平成24年度より行ってきた制度的実践(institutional work)の考察を継続して行うことで理論枠組みを検討した。具体的には、制度による組織の硬直化という制度派組織論が抱えてきた理論的課題を中心に検討した。本研究では、とりわけ制度派組織論が制度の原型としての官僚制を表現する際に用いた「鉄の檻」に代表されるメタファーに注目しながら、制度概念で見失われてきた理論的内包の検討を行った。 (2)経験的な調査研究を通じた実践的含意の追求に関しては、第一に、上記の検討を通じて構築された理論枠組みをもとに、シャープ株式会社の緊急プロジェクトの分析を行った。その結果、緊急プロジェクトには、これまで組織を硬直化させると考えられてきた官僚制の原則が組み込まれていたが、その官僚制の原則こそが幾多のイノベーションを生み出してきたことが明らかになった。本研究では、これらの事例をもとに官僚制がイノベーションを生み出すメカニズムの検討を行った。第二に、初年度より調査を行ってきた鋼鈑メーカーにおける人事制度改革の分析を行った。具体的には、第一にマネージャーによって人事制度改革が推進されてきたプロセス、第二に人事制度改革を通じた従業員に求められる役割の変容という二つの観点からの分析を行った。その結果、同社の人事制度改革はHRM固有の考え方によって駆動されていたことが明らかになった。 平成25年度は、以上の理論的検討の上で行われた二つの分析に関する論文が学術雑誌にて公刊された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において、二年目にあたる平成25年度は(1)初年度より継続的に行われる制度派組織論の体系的な文献レビューを通じた理論枠組みの構築と(2)経験的な調査研究への着手を予定していた。 (1)文献レビューに関しては、制度的実践と制度的リーダーシップという二つの概念の検討を予定していた。まず、制度的実践の検討に関しては、制度派組織論の嚆矢となった古典的研究から最新の欧米のジャーナルに掲載された論文まで幅広く文献レビューを行った。さらに制度派組織論が制度の原型としてきた官僚制の議論までフォローしてレビューを行った。その結果、本年度は、制度的実践を捉えるための理論枠組みの検討まで行うことができ、その理論枠組みに基づいた分析を行うことができた。次に、制度的リーダーシップの検討に関しては、現在、古典から最新の研究までフォローすべく文献レビューを遂行している段階であり、継続して検討を続けて行く予定である。 (2)調査研究に関しては、本研究では制度の創造と変革という二つの観点からの研究が予定されており、当初の予定では、本年度は制度の創造に関する研究に着手する予定であった。しかし、平成26年度より制度の変革に関する調査を開始する予定であった鋼鈑メーカーの調査が初年度より開始できたことに伴い、順序を入れ替えて、本年度は制度の変革に関する調査研究を遂行した。本研究の成果については、先述のように既に学術論文として公刊される段階にまで進んでいる。 以上のように、本研究は、一部、当初の予定とは順序を入れ替えながらも順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として(1)文献レビューと(2)経験的な調査研究という二つの観点から記述する。 (1)本研究は制度派組織論に根ざしているが、その中でもとくに制度的実践と制度的リーダーシップという二つの概念を中心に文献レビューを行っている。まず、制度的実践に関しては、先述のように既に理論枠組みをもとに分析が行われる段階にまで進んでいる。しかし、欧米のジャーナルなどでは引き続き制度的実践に関する研究が公刊されていくことが予想されるため、継続して最新の動向をフォローすることで理論的な研鑽を重ねていく予定である。最新の動向をフォローするために国際学会に参加するなどして積極的な情報収集に努めていきたい。さらに、分析を通じて明らかになった発見事実をもとに、理論枠組みの再検討も行っていく予定である。次に、制度的リーダーシップに関しては、古典から最新の研究まで体系的にフォローすべく文献レビューを行っている段階である。継続して文献レビューを行っていくことで、平成26年度中に理論枠組みを検討する段階に入ることを予定している。 (2)経験的な調査研究については、平成25年度は、制度の変革に関する研究の成果をあげることができたため、平成26年度以降は、制度の創造に関する研究に着手する予定である。しかし、より多くの実践的含意を追求するとともに、さらなる理論的な研鑽を目指して、制度の変革に関する新たな調査研究の機会も積極的に開拓していきたい。
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