本研究の目的は、制度の創造や変革を担うリーダーシップを理論的・経験的に検討することにあった。経営組織論の中で制度の創造や変革を理論的に検討してきたのが制度派組織論であるが、理論枠組みが十分に整えられてこなかった。それに対して、第一に、制度派組織論の体系的なレビューを通じた理論枠組みの構築。第二に、経験的な研究を通じた実践的な含意を追求してきた。 上記目的のもと、平成24年度から平成26年度にかけて、制度的実践と制度的リーダーシップという概念を中心に検討することで、制度の創造や変革、さらに、それらを担うリーダーシップに関する理論枠組みを構築した。その理論枠組みのもと、企業が営む事業(制度)の創造と企業内の制度変革という二つの観点から経験的な研究を行い、成果をケース、および、論文として公刊してきた。 当初に予定していた経験的な研究は平成26年度までに遂行し終えたことから、平成27年度は当初の計画通り新たなサイトを探し調査を行った。具体的には、制度の創造という観点から、ベンチャー企業を2社、起業を支援するインキュベーション施設1社の調査を行い、それぞれケースとして公刊した。韓国においても社会的企業を担うベンチャー企業、それらを支援する中間組織や政府機関の調査を行い、成果を論文として公刊した。制度変革という観点からは、238社の回答を得られたアンケート調査をもとに人事施策に関する分析を行い、論文として公刊した。 また、これまでの分析の途上で方法論についてより深く検討する必要が見出されていた。そこで、制度派組織論の方法論を補完すべく批判的経営研究の検討に取り組んだ。その成果は上述の韓国の調査に基づいた社会的企業の論文に含まれている。批判的経営研究の体系的なレビューには至れていないが、その検討は制度派組織論の枠組みを大きく超えるものでもあり、今後の課題として継続的に取り組んでいきたい。
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