本研究の目的は、企業再生における日米両国での早期対応企業の特徴を比較し明らかにすることにある。具体的には、米国企業において早期に再生行動を実施できた企業とそうではない企業を比較し、再生必要状況の認識と実際の再生行動との関連性について、両国の企業再生における認識と対応の各特徴と相違を提示し、米国と比較し危機認識も対応も遅れがちな日本企業に対する早期再生への対策を得ようとするものである。 公刊資料および文献調査から、米国企業における再生行動の組織的な特徴として1)米国企業では再生状況の初期段階で危機認識がされ、その契機は株式市場での評価影響が大きいこと、2)再生対応の宣言および行動開始の迅速さ(組織意思決定・法制度手続き双方で米国企業は機動性が高い)が挙げられた。 本年度は上記米国企業の再生行動の特徴に基づいて、日本国内の企業を対象に質問票調査を実施することで、両国の再生行動の比較を試みた。質問票においては、①経営課題、②危機認識の状況、③業績変化に対する行動(対応策)、④利害関係者との関係、の質問群を準備し国内上場企業(5業種)を対象に調査を実施した。 調査結果から、日米両国の企業再生において、再生状況の初期段階で危機認識が重要であることと同時に、再生対応の宣言および対応行動開始の迅速さが、ともに企業の再生行動の成功を左右する可能性を示唆できた。よって、早期段階での危機認識のみならず、加えて全社対応を早期に開始するという、認識と行動の連続した段階を経ることが、企業再生を迅速に完了するために必要な要素であることが本研究から明らかになった。
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