研究課題/領域番号 |
24730332
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
矢口 義教 東北学院大学, 経営学部, 准教授 (30537288)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 企業の社会的責任 |
研究概要 |
平成24年度の研究実績は、共著著書1本と学会発表2回を実績として残すことができた。前者は、東北学院大学おもてなし研究チーム編著(2012)『おもてなしの経営学理論編〔理論編〕―旅館経営への複合的アプローチ―』(創成社、総頁244頁)であり、私は第7章の「ホテル・旅館業の社会的責任―東日本大震災における取り組みとCSR―」(192-224頁)を執筆担当した。 学会発表では、「東日本大震災における企業の社会的責任の意義―被災地ホテル・旅館業の取り組みを中心に―」(日本経営学会第86回大会、2012年9月8日、於:日本大学)、「東日本大震災における企業活動とCSR」(生活経済学会東北部会研究大会、2012年10月13日、於:東北学院大学)において、研究成果を発表した。なお、これら2つの学会発表はすべて単独発表である。 2012年度に達成したこれらの3本の研究成果は、東日本大震災の発生時に企業がどのような活動をして、また、それが地域社会の維持・存続にいかなる役割を果たしたかということをCSR(企業の社会的責任)の観点から考察するものである。CSRという側面から見ても、被災地企業の震災時における取り組みは、ISO26000などにおいて示されるグローバル・スタンダードにも合致するものであり、事業活動という本業を維持すること、つまり経済的責任を果たすことが震災時のCSRとして大きな意味を持つことが示された。 研究計画において、企業と地域社会の相互的信頼関係の視点を提示したが、震災と企業活動において、まさにその信頼関係の一端を見ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、東日本大震災におけるCSR(企業の社会的責任)について考察するものであるが、その流れは次のように考えてきた。まず、2012年度には、主として新聞、雑誌記事、インターネット資料、図書文献などを通じた情報収集を行う。ついで、2013年度には、引き続き情報収集を行いつつも、研究代表者が所属する東北学院大学の所在地である宮城県の企業経営者へのヒアリングを行い、震災時の取り組みや復興に向けた取り組みを調査することである。そして、最終年度の2014年度には、宮城県外の企業も含めてヒアリング調査を行い、震災と復興過程におけるCSRの役割と意義を提示することにある。 2012年度は、当初文献研究を中心に進めていく予定であったが、被災地企業数社の経営者にヒアリングする機会を持つことができたため、それによって「研究実績の概要」で提示した3本の研究業績を達成することができた。具体的には、震災時に避難場所としての役割を果たしたホテル・旅館業、サプライチェーンの維持に尽力した自動車部品関連の製造業、さらには被災地の産業復興に大きな役割を持つ水産加工業などの企業にである。つまり、本来ならば、2013年度に行う予定であった研究を先取り的に2012年度に行うことになったのであり、研究発表をすることにつながったのである。 それゆえ、本研究は、当初の計画以上に進展していると判断した。しかしながら、その反面、新聞や雑誌などを通じた情報収集が不十分にはなってしまったとも考えられるが、研究初年度で研究成果の一端を発表できたのでこのような判断をした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は次のとおりである。まず、引き続き文献調査を行い、東日本大震災時の企業行動と復旧・復興に向けた企業の取り組み、あるいはそうした企業行動に影響を及ぼす政府・行政の政策に注目して文献調査を行う。また、日本において過去に発生した2つの大震災(阪神大震災、新潟中越沖地震)における企業活動の役割についても文献調査を行い、その意義について、東日本大震災時のそれとの比較考察を行いたいと考えている。なお、海外で発生した震災時における企業が果たしたCSR(企業の社会的責任)についても、文献研究を中心に考察を進めていく。これによって、東日本大震災と企業活動について、CSRの観点から仮の分析フレームワークを作成したいと考えている。 そして、このような分析フレームワークに照らし合わせて、調査・質問事項を精緻化させて、さらに企業の調査を行っていきたいと考えている。とくに、2013年度は、震災時の生活物資提供で大きな役割を果たした企業のケースを追っていく。ヒアリング調査だけでなく、多数の意見を聴取するためにアンケート調査も行いたいと考えている。他の被災地の調査(関西、新潟、北海道など)、さらには可能であれば、海外調査・資料収集なども行っていきたいと考えている。 あくまで予定となっているが、成果については、研究代表者が所属する東北学院大学の紀要、9月開催予定の東北経済学会での学会発表、さらにできれば著書として成果を発表できればとも考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画としては、主に物品と調査旅費の支出が主となる。物品という面では、著書や雑誌、文具、パソコン機器などの購入が主になり、いずれも10万円を超える支出はないと想定している。また、旅費については、現状では、宮城県内の近距離の出張旅費が数回(調査受け入れ企業数によるため変動)、加えて県外出張1回程度の使用を予定している。 また、今年度はアンケートや資料収集などを予定しており、これには多大な労力を要することがしばしばである。また、ヒアリング調査の際のテープ起こしも大きな労力を要する。そのため、本学学生あるいは近隣大学学生をアルバイトとして活用する予定でもあり、人件費支出の必要性もあると考えている。
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