研究課題/領域番号 |
24730344
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
足代 訓史 早稲田大学, 商学学術院, 助教 (40583258)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ソーシャルメディア / ビジネスモデル / 行為システム / 事例研究 |
研究概要 |
本研究は、日本発のソーシャルメディアのビジネスモデルの特性と進化プロセスを解明することに重点が置かれている。研究の具体的手法としては、ビジネスモデル論と行為システム分析に関する理論的研究と、ソーシャルメディアに関する事例研究に同時並行的に取り組むものである。 まず、研究業績として公開に至った研究群について述べる。ビジネスモデル論に関しては、欧米・日本におけるビジネスモデル論と関連研究であるビジネスシステム論・プラットフォーム論などの成果を整理しつつ、本研究の問題意識である「ビジネスモデルの動態的側面」について分析するためのフレームワークを試論的に構築した。また、事例研究に関しては、分析対象3社に関する複数事例記述とそのうち1社(GREE)に関する単一事例記述の2つを進め、それぞれに関して前述したビジネスモデル理論のフレームワークを基にした分析をおこなった。これら作業をおこなうことで、次年度に計画している独自の理論的枠組みの構築と本格的事例研究のための課題や新たな方向性が浮き彫りとなり、次年度の研究をより精緻に遂行できるようになったと考えている。 これらの「ビジネスモデル理論に基づく事例分析」に関しては、組織学会における学会報告とアントレプレナーシップ・カンファランスにおける学会報告ならびにフルペーパー発表をおこなった。また、ビジネスモデル論にかかわるプラットフォーム論の理論研究に関しては、早稲田大学の英文紀要で論文を発表した。 一方で、研究業績としての公開はおこなわなかったが、行為システム分析の方法論に関する文献研究や、行為システム分析ための具体的ツールであるテキストマイニングソフトの使用方法の学習を進めた。また、テキストマイニング分析の素材となる事例分析対象各社の公開情報のデータベース化も進めた。これら作業は次年度研究への準備として位置づけられるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的を達成するための、平成24年度中のマイルストーンは概ね以下の通りであった。(1)ビジネスモデル論に関しては、既存研究のレビューを、本研究の問題意識である「ビジネスモデルの変化」についての視座からおこなうことが主軸であった。(2)行為システム分析に関しては、行為システム分析へのテキストマイニング活用に関する方法論的検討をおこなうことであった。また、(3)事例研究に関しては、分析対象となる3社の公開情報データの整理とテキストマイニング分析のためのデータベース化、ならびに対象企業各社のビジネス・ケース作成に着手することであった。 (1)に関しては、上述した事例研究(学会報告ならびに論文)の中の「既存研究の検討」部分でレビューを進めており、順調に進んでいると考えている。試論的にではある平成25年度に構築予定の分析枠組みの初期案も提出しており計画以上の進捗を見せている。(2)は、業績を公開しなかったものの、文献研究ならびにツールの学習を進めており、概ね順調に進行している。(3)に関しては、計画以上に進んだ部分とやや遅れている部分が混在している。分析対象各社に関する事例記述(比較事例分析ならびに単一事例分析)を公開した研究業績の中で既におこなっていることと、テキストマイニング分析のためのデータベース化を相当程度進めていることは計画以上の進捗であるが、一方で各社それぞれのビジネス・ケース作成には部分的に着手したばかりであり、やや遅れていると言わざるを得ない。以上、上記3つの進捗を合わせ、今回は自己評価を「(2)おおむね順調に進展している」としたい。 なお、業績の公開に関しては当初のターゲットと異なった学会や雑誌に成果を報告しているものもあるが、概ね順調に進んでいることを付記しておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は概ね計画通り進行しているが、今後2年間は下記の点に気を払いつつ研究を進めていきたい。 平成25年度に関しては、理論研究と事例研究を相互浸透させつつ、互いの完成度を高めていきたい。ビジネスモデル論に関しては、ビジネスモデルの動態的側面(変化プロセス)を分析可能な独自フレームワークの構築をおこなう。なお、フレームワークは、事例分析を通じてその完成度を漸次的に高めていくことを心がける。また、行為システム分析に関しては、実際にテキストマイニングを用いた事例研究をおこなうことで、行為者の「意図」をどのように推論可能かの具体的検討をおこなう。事例研究に関しては、事例分析各社のビジネス・ケースを完成させつつ、上述の理論的枠組みや方法論による事例分析も並行的に進行させていきたい。 平成26年度は前年度までの成果を踏まえ、総括的な分析ならびに研究成果の創出をおこなう予定である。中心的タスクとしては、前年度に着手したテキストマイニング分析を用いた対象事例の行為システム分析の完成と、事例研究を通じたビジネスモデル理論に関する理論的枠組みの精緻化がある。それらを通じて、本研究の目的である事例分析対象各社のビジネスモデルの進化メカニズムの解明をおこない、「日本発ソーシャルメディアのビジネスモデルの進化メカニズム」の提示をおこないたい。 各年度においては、研究成果発表を学会や論文誌を通じておこない周囲からのフィードバックを得ることで、研究の精度や妥当性を漸次的に高めていく。なお、交付申請書に記した研究成果発表先(予定)からは多少の変化があることが想定されるが、内外さまざまな場所での業績発表をおこなうことで、多様な視点からのフィードバックを収拾したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた背景としては、参加学会目的地の変更(金沢→大阪)による旅費の変更、人件費・謝金として計上していた英語校閲費用(結果的に「その他経費」として計上)が想定よりもかからなかったことが主原因である。これらによって生じた研究費は、次年度に請求する研究費と合わせて、下記の用途で使用させて頂く予定である。 次年度以降に請求する研究費の主な使用目的は、物品費(書籍など)、旅費(国内外学会出張ならびに共著論文執筆者との打ち合わせのための出張、ヒアリング出張など)、人件費・謝金またはその他(英語校閲費用など)である。これら主たる使用目的は平成25年度と平成26年度に共通する。 なお、平成25年度に関しては国際学会での報告を予定していたが、訪問日程が合わなかったため、報告を見送ることとなった。これによって発生する余剰研究費は、平成26年度での複数の国際学会訪問のための旅費もしくは、平成25年度に国際学会で発表できなかったことの代替手段としての英語論文執筆のための翻訳・校閲料として使用したいと考えている。また、平成24年度に事例研究(定性的研究)を推し進める過程で、定性分析のためのPCソフト(例:MAXqdaやNVivo)を用いた研究をおこなうことの重要性を認識した。そのため、物品費を書籍だけではなく該当するソフトウェアの購入にあてたり、旅費や人件費・謝金、その他費用の一部を当該目的のため再配分したりすることも予定している。
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