研究課題/領域番号 |
24730346
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研究機関 | 山梨学院大学 |
研究代表者 |
千田 直毅 山梨学院大学, 現代ビジネス学部, 講師 (30583661)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 組織構造 / 人的資源管理 |
研究概要 |
本研究の目的は、変革期の日本企業において組織構造と人的資源管理システムに従前の日本企業には見られなかった新たな補完的関係ともいうべき状態が存在することを理論的・実証的に検証することである。その検証を行う上で初年度である平成24年度は既存の組織論および人的資源管理論の諸研究に関する文献の探索と整理にとりわけ注力し、来年度以降の実証調査に向けての理論的フレームワークの構築および、いくつかの企業に対するインタビューを通じた探索的調査を実施した。 また、2009年に自身が所属していた研究機関(神戸大学)で実施した企業の人事部長および開発部門長向けのアンケート調査で得られたデータを今回の研究のフレームワークに即して新たに統計的に分析しなおし、その結果を論文にまとめ査読付き雑誌に投稿(掲載済)する過程で査読者から様々な有益なコメントをいただきながら本研究の理論的フレームワークの精緻化を行ってきた。 さらに、本年度は東南アジアに開発・製造拠点を持つ製造業1社に対して行ったインタビュー調査の結果を分析し、学会報告を実施した。先に示した統計的分析とこのインタビュー調査の分析結果を簡潔にまとめると、統計分析においては日本企業の組織構造、とりわけ従業員の仕事の調整のあり方の変容が生じた場合、その調整のあり方に対して補完的関係となる人的資源管理諸制度の変容がみられた企業においては良好なパフォーマンスがみられることを確認した。インタビュー調査の分析においては、そうした組織構造の変容とそれに伴う人的資源管理の変容がなぜ、どのようなプロセスを経て生じるのかを経時的に詳細に分析していくことで、現代の日本企業にみられる新たな組織と人的資源管理の補完的関係の理論の体系化を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の進捗については概ね当初の計画通りに進んでいると考えられる。当初の計画においては初年度(平成24年度)は日本企業における組織と人的資源管理の新たな補完的関係に関する理論的フレームワークの構築・精緻化を目指すための文献研究、既存のデータの整理、分析をもとに来年度以降の新たな実証的調査に向けての準備を行うことができたと考えている。また、初年度にまとめた文献研究の結果および日本企業1社へのインタビューの結果と分析を学会報告として発表し、様々な有意義なコメントを得ることができ、本研究で示すべき理論的フレームの再検討と精緻化を推し進めることができた。これらの初年度の研究結果をふまえて、本研究で目指す理論構築に関してより詳細に検討すべき点も存在するために、初年度に引き続き文献研究と実証研究を並行しながら現代日本企業における組織と人的資源管理の補完的関係のあり方に関する理論の精緻化を試みる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度前半においては、当初の研究計画書のとおり、複数の日本企業の人事担当者へのインタビュー調査のための仮説の構築、調査設計およびインタビュー調査を実施する予定である。リサーチサイトの確保については研究計画書でも記したとおり、研究者がこれまで接してきた神戸大学経営学研究科の社会人大学院のOB・OGをはじめ、現在の所属機関で構築した企業とのネットワークを活用しながら、少なくとも3~4社へのインタビュー調査を実施しようと計画している。 平成25年度後半においてはそれらの調査結果の分析を経て、全体の研究のまとめのフェーズに入ることになる。初年度の文献研究もふまえながら、最終的に本研究で体系化するべき理論をまとめ、論文や学会報告という形で公開する予定である。特に25年度中に本研究の進捗を学会において報告し、そこでのコメント・サジェスチョンを受け、それらの有意義な指摘を研究に反映させながら本研究の質的価値を高めることを目指す。 こうしたプロセスを経ながら、本研究において構築された理論を最終的な成果物として論文としてまとめる段階においては、将来的に本研究で示そうとする理論をより一般化しようとするための大量サンプル調査に向けた仮説の再検討、精緻化を必要に応じて実施し、本研究がより発展可能な形でまとめられるような作業を実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においては、概ね当初の研究計画書の使用計画にしたがって、経営学分野における組織論関係および人的資源管理論関係およびその他本研究に関連する書籍や資料の購入、そして研究を進めていく上で必要な文具やPC関連の消耗品に合わせて約400,000円程度使用する予定である。 また、平成25年度は複数の企業に対してインタビュー調査を実施する予定なのでその際に必要な旅費、調査謝金、および本研究に関する学会報告や研究会の参加のための旅費に約350,000円程度の使用を想定している。ただしインタビュー調査についてはその数が増減する可能性もあるため、旅費の使用金額は多少の変動が生じる可能性もあることを想定している。 その他論文や資料を作成するための印刷費等の雑費についても約50,000円程度の使用を想定している。
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