公企業の効率性を検証するために、イギリスの医療システム(National Health Service)のガバナンスを分析した。分析にあたり、NHSから支出、各地域の財源管理団体への予算配賦、その内訳等に関するデータセットを作成した。それをもとにガバナンスを分析した結果、NHSから財源管理団体への予算配賦等は適正に行われている一方で、各財源管理団体の経営陣の報酬に大きなばらつきがある点などが明らかになった。 またイギリスでの考察が医療計画の考察に活かせると考え、最終年度には、日本とイギリスの医療計画におけるサービス提供圏の規模の比較を、上記の財源管理団体と日本の二次医療圏の患者数および医師数の比較から行った。その結果、プライマリケアサービスを提供する財源管理団体および医療圏の適切な規模の大きさを導き出した。 一方、日本の公企業のガバナンスとしては、介護施設の運営における透明性に焦点を当てた。介護サービス情報公表システムに基づいて、全国の介護施設(特別養護老人ホームと介護老人保健施設)の第三者評価の実施状況を明らかにした。その結果、第三者評価の導入に意欲的な介護施設ほど、サービスの質が高い点などが明らかになった。 本研究では、期間全体を通じ、イギリスの公企業の分析をもとに日本の公的セクターの運営について考察した。今後は日英ともに、トップマネジメント、外部監査、意思決定、パフォーマンス、サービスの質等アウトカムなどの点からさらに精査を重ねる必要はあるが、公企業経営の分野を新たに開拓する実証的な研究をすることができた。
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