研究課題/領域番号 |
24730352
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中村 志保 立命館大学, 経営学部, 准教授 (20389191)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本企業 / グローバル人材 / 国際人的資源管理 / 国際情報交換 |
研究概要 |
平成24年度は、1.文献の整理、2.本社と海外子会社のインタビュー調査、3.国際学会での報告、4.関西の人事担当者との意見交換などを行った。1~4について、具体的には次の通りである。 1.文献整理については、国際人的資源管理(International Human Resource Management: 以下IHRM)に関する新たに発行される論文を読み、整理した。2.本社と海外子会社のインタビュー調査については、2012年4~6月に村田製作所、オムロン、パナソニック、シャープなどの本社を訪問し、人事担当者とのインタビューを行った。この本社インタビューは3年ごとに行っており、前回のインタビューとの違いを比較し、まとめている。現地の状況を把握するために、アメリカの子会社で働く日本人海外派遣者と現地人材の両方のインタビューを行った。3.国際学会での報告については、2012年6~7月にAJBS、AIB、12月にIHRMで報告を行った。4.関西の人事担当者との意見交換については、関西生産性本部が実施した研究会に講師として参加し、本社の施策について検討を行った。 得られた研究成果は次の通りである。日本企業の本社、海外子会社の人材構成はこの調査を開始した10年程前と比べて、大きく変化してきている。海外派遣者を重視する傾向には変わりはないが、以前に比べて現地人材の上級管理職者への登用は増え、彼らのの本社への逆出向、外国人の本社採用数は明らかに増加している。このような企業の本社人事部は日本人海外派遣者以外のグローバルな人材の登用と雇用の継続をめざし、日本人・外国人の教育制度、グローバルな評価制度の導入などの人事施策を充実させている。また、まだ調査方法に限界があり、仮説の段階ではあるが、こういった企業の業績は高い傾向にあることが分かり始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は理論的枠組みと仮説命題の導出を行う計画を立てていた。本研究は筆者が大学院時代から行っている研究の延長線上にある。日本企業のIHRMの変容のプロセスを追究することを目的としているため、大きな研究の枠組みは変えていないが、文献は随時新しいものが発行されるため、詳細についてはその都度変化させている。 その枠組みをもとに、2012年はオムロン、シャープ、村田製作所、パナソニックなどのインタビュー調査を行い、現場と理論のかい離が生じないよう研究枠組みの精査を行った。 これらの研究成果をAIBやIHRMなどの国際学会で報告し、学術関係者からの意見やコメントを頂き、それを参考に理論的枠組みをさらに検討した。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は平成24年度に行った本社人事部のインタビューによる事例研究を整理した上で、本研究の研究枠組みを見直す。そして、これらの事例研究を継続的に行いながら、一方でアンケート調査を実施する予定である。具体的に1社の企業の人事部と共同でこの調査を行うことが決定している。ここでは、本社人事部という視点のみならず、海外子会社の現地人材、また逆出向者へのアンケートも行う予定である。 これに関連して、本社の人材戦略や、人事施策が現地人材の雇用や定着にどのような影響を及ぼしているかについて、本社人事部に着眼するのみならず、現地人材へのインタビューを実施する計画である。これまで既にオランダとアメリカで現地人材へのインタビューを行っており、これらの結果を基に調査項目を作成し、先の人事部との共同調査の中でこのインタビューを実施する予定である。 以上のことを通じて、再び理論を丁寧に整理し、論文にまとめていく。同時に国内外での学会で報告を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年は上述の通り、企業調査を中心に研究を進める。そのために、調査に関わる企業への出張費、質問票や資料の印刷費、データをまとめるためのUSBメモリなどの購入、人件費(資料整理)がかかる。質問票の作成や研究の枠組みについて、他大学の先生との打ち合わせや研究会への出席のために交通が必要となる。新たな文献も収集する必要があり、図書の購入も予定している。 次に、平成24年度から25年度への繰越分については、次の通りである。平成24年度はAIB、AJBS、IHRMの3つの国際学会で論文が採択された。AIBとAJBSは同時期にアメリカのワシントンDCで開催され、IHRMはインドで開催された。平成24年度の予算の計画段階において、その他必要となる費用を差し引いた後、この2つの学会の両方に参加する十分な費用(渡航費、滞在費、学会参加費)が残らないことが分かった。その段階で、本学の国際化に関する研究予算(国際学会への参加に関わる旅費・参加費の研究予算)の申請を行い、審査の結果、採択された。 科学研究費と本学の国際化に関する学内研究費は併用が出来なかったこと、学内研究費は翌年に繰り越しが出来なかったことの2つの理由から、国際学会参加費用については学内研究費を優先して使用し、科学研究費を次年度に繰り越すこととなった。繰り越された研究費については、パソコンが故障しため、その購入費用として使用する予定である。
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