研究課題/領域番号 |
24730352
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中村 志保 立命館大学, 経営学部, 准教授 (20389191)
|
キーワード | 国際人的資源管理 / グローバル人材 / グローバル人材の育成 / 海外派遣者 / 現地化 |
研究概要 |
平成25年度は、1.文献の整理、2.インタビュー調査、3.執筆(教科書、論文)を行った。1~3について、具体的に次の通りである。 1.文献整理については、国際人的資源管理に関する論文、また、官公庁や産学連携によって行われている研究会やアンケート調査の資料を整理した。特に近年、グローバル人材の育成やグローバルな人事制度に注目が集まっているため、資料の数も膨大であったが、そこに共通する課題について明らかにした。 2.文献整理を行いながら、過去のインタビュー調査でグローバル人材の育成や人事制度が他の企業と比較して発展している企業(G社)へ数回のインタビュー調査を行った。3年に一度の調査では聞き取れなかった内容やその詳細を明らかにした。一方で、2012年より開始した本社の国際人事制度が海外子会社にどのような影響を及ぼしているかを明らかにするために、海外子会社での調査も行った。 3.放送大学大学院テキスト『人的資源管理』の執筆を行った。その中では、上記1と2のG社の調査で明らかになったことをまとめている。また、この内容を放送番組に収録した。これは、2014年4月~2018年3月までBSテレビで全国放送される予定である。一方、中央経済社より出版された『現代 人的資源管理』では、上記1に限らず、これまでの文献研究を基に分析枠組みを作り、2のG社の調査で明らかになったこと論文としてまとめている。 これらのことから、得られた研究成果は次の通りである。 事例研究から、日本本社と海外子会社の人的資源管理施策は統合的に一体化して運用されるようになりつつあること、現地人材も長期的視野で内部育成を行っていること等の発見事実がなされた。総じて、日本企業が海外子会社の人材の現地化を進めながら、同時に本社の影響力を強めつつある実態が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は海外での学会報告を3回行った。平成25年度については、日本国内の官公庁や産学連携による研究会やアンケート調査の資料を丁寧に見直し、日本語でテキストにまとめ、社会に発信することに努めた。また、その内容を精査した上でフレームワークを作り、調査を継続し、論文(本の章)にまとめている。2年が経過したが、文献研究、フレームワーク、調査、考察は順調に進み、最後の研究報告(社会への発信)は、平成24年度から2年間にわたり、日本と海外ともに発信することが出来ている。これらのことから、3年間の研究計画のうち2年が終わった現段階では、おおむね順調に進展しているということが出来る。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、3年に一度の本社へのインタビュー調査により得たデータを基に、過去約10年間のプロセスについて考察を行った。また、その結果を国際学会で報告した。平成25年度は、近年増え続けているグローバル人材に関する書物や資料について整理し、発展していると思われるG社を中心に事例研究を行い、国内を中心に研究成果を発信した。平成26年度は、これまでの研究成果を英語で論文にまとめ、海外ジャーナルへ投稿することを目指す。同時に学外研究でカナダに滞在しているため、カナダの研究者との交流を深め(研究会などで報告して助言を頂くなど)、論文の内容をさらに精査し、可能な限り、在カナダ日系企業や在カナダ外資系企業、さらにはカナダの多国籍企業との比較を行うことを目的としている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は9月まで放送大学大学院のテキストの執筆と番組収録の準備を行った。テキストの校正は12月まで行った。この間、テキスト執筆や校正のために、文献収集を行ったが、官公庁の資料を中心に最新の情報を入手しようとしたところ、ほとんどの資料(外務省の統計や経済産業省の統計)は一部のものを除いて、インターネットを通じて入手出来るものが多く、書物の購入にあまり費用がかからなかった。さらに、本の執筆と番組収録にかかった費用、企業インタビュー交通費、制作費用、打ち合わせ時の交通費などは放送大学が負担したため、科研費から支出する必要はなかった。さらに、放送大学のテキストの構成は12月まで行われ、平成25年度のほとんどはこの放送大学の仕事に関するものであった。科学研究費はこれ以外の本の執筆や研究活動に使用された。 平成26年度は在外研究でカナダのThe Peter B. Gustavson School of Business at the university of Victoriaに在籍している。近くにはThe University of British ColumbiaのSauder Business Shool等があり、積極的に研究会や研究交流に参加したいと考えている。また、可能な限り、在カナダ日系企業、在カナダ外資系企業、カナダの多国籍企業の調査を行いたいと考えており、次年度使用額については、本科研費申請当時の計画にはなかったこれらの費用にも充当したいと考えている。
|