最終年度においては、研究実施計画に明記したように、研究成果の公表とそれに対するフィードバックを受ける作業を強化すると同時に、前年度までの調査ではまだ判明しなかった部分の調査を徹底的に行うことに専念した。具体的には、日本労務学会全国大会における研究成果の報告、各種研究会における研究成果の報告、さらには国内外の査読付き雑誌への投稿、および他の編集者による著書に掲載する論文の執筆である。国外の査読付き雑誌に投稿した論文は2015年3月に、修正要求を受け、現在修正作業中である。国内の査読付き雑誌に投稿した論文は、2015年3月末に採択許可を受け、4月内に微修正した完成原稿を送付し、受理された。他編者の著書に掲載する論文は、執筆が終了したため出版社に送付し、2015年9月に刊行予定である。 2015年3月期にほぼ一か月にわたり、ドイツ国内での調査を実施した。この結果、ひとつの調査企業において2000年代直前までのマネージャーの人的資源管理の全貌を明らかにできる資料の一群を紹介され、最重要なマネージャー層に絞り、その半分以上を調査することができた。 同研究は、19世紀後半から2000年代までの現代ドイツ企業のマネージャーに適用された人的資源管理の構造を、現地調査で得た情報を基に探る内容であった。これを通じ、経営管理層の再生産システムの解明が試みられた。結果として、一企業については、個々のマネージャーを包括する全容を、もう一企業については、全体的な構造と一部の個別化された人的資源管理の構造をつかむことができた。 同研究で得られた知見は、今後、ドイツ企業の競争力がどのような仕組みで再生産されているのか解明するうえで、重要な手掛かりをもたらす性格のものである。助成期間の間に公表された成果は、まだ一部でしかないため、今後も同研究にかかわる作業を継続し、調査結果の全容を学術論文として刊行していく予定である。
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