研究課題
若手研究(B)
本研究は、従来に比して相当に競争的となった保険市場におけるマーケティング戦略を体系的に取り扱ったものである。具体的には、保険業における各種マーケティング戦略について主としてミクロ経済学の手法を用いて分析したものである。このような研究スタイルは、保険業におけるマーケティング戦略における「一貫的な理論」を明らかにすることができる点において少なくない意義・重要性があるものと評価できる。そして上で示したことを背景に、平成24年度における研究実績の概要について示せば以下のようになる。第一に、保険会社が行う社員教育投資の水準について検討したことである。より具体的には、2社の保険会社が競争する市場を想定した上で、各社の社員教育投資水準と業界全体の財産としての信用の維持にかかる競争・協調構造について検討した。第二に、消費者が保険の目的物(例えば自動車)と保険(例えば自動車保険)とを同時に購入する状況について検討したことである。この検討は従来モデルにおいて保険の目的物が所与条件として与えられていた点を拡張したものであると評価可能であり、このような同時購入の場合における特徴について明らかにした。第三に、私的保険と公的保険とが両立するような市場(例えば医療保険市場、年金保険市場)における私的保険の性格について検討したことである。より具体的には、私的保険が通常財であるか劣等財であるかの検討であり、本研究では公的保険の特徴が決定的な因子となりうることを明らかにした。第四に、モラルハザードと保険金詐欺とが両方起こりうる市場を想定した上で、モラルハザードと保険金詐欺との間にどのような関連性があるかについて検討したことである。そしてその中で、この関連性の存在が、伝統的なモラルハザードモデルと異なった結論を導出することを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題に対応するいくつかのテーマに関しては、平成24年度においてすでに刊行されていたり、学会等にて発表を行ったりしている。平成24年度は初年度であったことから、当初の計画では「準備段階」と位置づけていたが、未完成な部分を少なからず有するバージョンではあるものの研究成果を公表するに至ったことから「(1)当初の計画以上に進展している」と評価した。
平成25年度は研究2年目に相当することから、初年度である平成24年度に発表した研究をさらに発展的に拡張等することに従事することとしたい。また本研究課題に該当する新しい切り口のテーマを探索するとともに、それらにかかる分析等も同時に進めて行くことができればと考えている。
当該研究費が生じた状況としては、毎年参加しているAsia-Pacific Risk and Insurance Association annual meetingにかかる経費が予想以下で済んだこと、学部内で公募していたインセンティブ経費を獲得できたことなどがあげられる。なお、主たる次年度の研究費の使用計画として、平成25年7月にニューヨークにて開催されるAsia-Pacific Risk and Insurance Association annual meetingへの参加にかかる旅費を考えている(すでに当該学会での発表についてはaccept済み)。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
Discussion Paper, Faculty of Economics, Nagasaki University
巻: 2013-01 ページ: 1-9
Journal of Risk Finance
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Advances in Computational Intelligence: 14th International Conference on Information Processing and Management of Uncertainty in Knowledge-Based Systems
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Insurance Markets and Companies: Analyses and Actuarial Computations
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