研究課題/領域番号 |
24730362
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
大倉 真人 長崎大学, 経済学部, 准教授 (50346904)
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キーワード | 保険 / リスク / 不確実性 / 経済分析 |
研究概要 |
今年度は、保険およびその対象である不確実性・リスクに関連した市場経済分析を主たる研究対象とし、以下に示す3本の論文を刊行した。各論文の簡単な要約を示せば、以下のようになる。 "The Impact of Public Insurance on Private Insurance Demand: Is Private Insurance a Normal Good?"は、昨年2月に刊行したものの改訂版であり、私的保険が正常財(劣等財)であるかどうかを公的保険の影響の観点から分析した論文である。分析の結果、公的保険の給付(保険金)の方式が私的保険が正常財か劣等財かを決める決定的な要因であることを明らかにした。 "The Value of Demand Information in an Insurance Market under Demand and Cost Uncertainty"は、需要の不確実性と支払保険金(コスト)の不確実性が共に存在する保険市場を想定した上で、需要情報の価値について論じたものである。主たる結果として、この2つの不確実性が需要情報の価値に対して相反する効果を有していることを明らかにした。 "Does Competition Really Promote Risk Management?"は、各企業におけるリスクマネジメント実施可否と市場に存在する企業数との関連性について分析したものである。分析の結果、この両者の関係は一意的には決まらず、潜在需要量やリスクマネジメントコストなどといった外生変数によって決まることを明らかにした。 また上記の他、本研究助成を受けた論文”The Relationship between Moral Hazard and Insurance Fraud”(平成25年2月刊行)が「第3回日本保険学会賞(論文の部)」を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上に示した論文の一部については、すでに学会等で発表を行っており、また外部雑誌への投稿をスタートしている。これより、「平成25年度末あたりをメドに、本研究にかかる研究成果をディスカッションペーパーなどの形にまとめる」という当初の計画以上に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究を発展させることを目的とした今後の研究の推進方策等としては、以下の2つを考えている。 第1は、学会等での発表である。一例として、今年7月にロシアで実施されるAsia-Pacific Risk and Insurance Association annual meetingにおいて"Does Competition Really Promote Risk Management?"の研究発表を行うことが内定している。 第2は、外部雑誌への投稿および刊行である。目下レフェリー中のものも含めて、国際ジャーナルへの掲載を目指して作業を続ける予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費が生じた理由として、昨年7月に参加した国際学会にかかる経費に関連して学部から補助を受けられたことなどがあげられる。また、当初予定していた研究室におけるパソコン機器に関する買い替えを実施しなかった点もあげられる。 主たる次年度の研究費使用計画として、5月にスウェーデンで実施される国際学会および7月にロシアで実施される国際学会への研究発表参加にかかる諸経費を考えている(すでに両学会での発表についてはaccept通知を受けている)。
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