本研究では、水産物を対象に、財・サービスが保有している多様な品質が消費者に与える影響について検証を行った。平成27年度では、全国アンケート調査から、消費者が水産商品の何を重視して購入を行うのか、差別化された品質の違いに対して金銭的な評価はどの程度かについて分析した。 水産物商品(特に生鮮魚類)の特徴としては、農作物に比べて安定的ではなく、個体差による品質の差が比較的大きい。そのことは、生産者・流通側からすれば多くは品質そのものではなく供給量に依拠した価格形成をせざるを得ない状況となり、一方消費者は、特定の種類の魚類に対する選好よりも、価格との関係によって購入選択をしていることが想定される。特に消費者が重要視する鮮度品質は、商品自体が従来持っているものとは別に、流通の過程のなかで発生する付加的なものである。以上のことから、①期待される品質パッケージとしての商品が、一定の市場評価をうけるための供給量として存在するか、②その商品が、流通の過程で重要な品質(鮮度)にどの程度影響を受けているか、③生鮮魚類が他の財に比べて魚類同士での代替可能性が高い可能性、④情報の非対称性により消費者の食に対する知識の影響が大きい可能性、ことを明らかにすることにより、水産物商品の品質の特徴を検証した。 主な結果としては、おおよそ仮説を裏付ける内容が示された。特に、本研究で重要視した「情報品質」については、①消費者の知識は生鮮魚類に対してあまり持ち合わせておらず、消費者もそれを自覚していること、②宣伝などで得られた情報は、長期にわたり購買活動に影響を及ぼさないこと、③物理的な品質に対する反応は安定的ではなく、価格に対する反応が商品選択に影響を及ぼしていること、などが示された。
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