研究課題/領域番号 |
24730366
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
柳瀬 典由 東京経済大学, 経営学部, 教授 (50366168)
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キーワード | 国際研究者交流 / 国際的査読誌への掲載 |
研究概要 |
本研究の目的は、市場メカニズムを活用した効率的な企業年金システムの構築可能性を検討するべく、以下の三点を理論的かつ実証的に掘り下げることにある。第一に、母体企業は複数の代替案の中からどのようなインセンティブによって制度選択を行っているのかという論点、第二に、選択された制度の運用、例えば、確定給付型の年金制度における資産運用や積立政策に関して、母体企業にいかなるインセンティブが生じているのかという論点、第三に、効率的な企業年金システムを構築するために十分なインセンティブ及び情報のフィードバック・メカニズムを、金融市場は提供しているかどうかという論点である。これらのうち、平成25年度は、主に、第一の論に関わる以下の実証分析を進め、Goto/Yanase (2013) にその成果を取りまとめた。Goto/Yanase (2013)では、東証1部及び2部に上場する3月決算企業(金融・保険を除く)を対象として、2001年3月期から2010年3月期までの検証期間において、業種要因をコントロールしたうえで、退職一時金や企業年金を採用する企業の財務的特徴を抽出することを通じて、上述の問題への回答を探っている。実証分析の結果、以下の点が明らかになった。先ず、高い成長機会を有するとともに従業員の平均年齢が低い小規模な企業は、外部積立型の確定給付型企業年金制度を採用しない傾向にあり、場合によっては、それらを制度終了させてしまう可能性が高いことが分かった。その一方で、内部積立型の退職一時金のみを採用する企業の特徴としては、相対的に低い収益性が示されることが分かった。これらの実証結果によって、高い成長機会を有するとともに従業員の平均年齢が低い小規模な企業が、従業員の退職後所得に対する弱い保護と引き換えに、企業の財務的柔軟性を確保しようとしている可能性を提示することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で取り組むべき論点は以下の3点である。第一に、母体企業は複数の代替案の中からどのようなインセンティブによって制度選択を行っているのかという論点、第二に、選択された制度の運用、例えば、確定給付型の年金制度における資産運用や積立政策に関して、母体企業にいかなるインセンティブが生じているのかという論点、第三に、効率的な企業年金システムを構築するために十分なインセンティブ及び情報のフィードバック・メカニズムを、金融市場は提供しているかどうかという論点である。これらのうち、第1の論点と第3の論点については、既に複数の査読付学術誌に掲載されており、そのうち、1点は国際的に評価の高い学術誌である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で取り組むべき論点は以下の3点である。第一に、母体企業は複数の代替案の中からどのようなインセンティブによって制度選択を行っているのかという論点、第二に、選択された制度の運用、例えば、確定給付型の年金制度における資産運用や積立政策に関して、母体企業にいかなるインセンティブが生じているのかという論点、第三に、効率的な企業年金システムを構築するために十分なインセンティブ及び情報のフィードバック・メカニズムを、金融市場は提供しているかどうかという論点である。これらのうち、第1の論点と第3の論点については、既に複数の査読付学術誌に掲載されており、一定の成果を得ているが、第2の論点については研究およびその成果が不十分である。そこで、今後はこの論点を中心に研究を進展させ、具体的な成果をあげたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
データ入力・編集作業を自ら行ったため、アルバイト(人件費・謝金)が剰余となった。 データ入力・編集作業の補助を一部、アルバイト(人件費・謝金)に委託する予定である。
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