研究課題/領域番号 |
24730366
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
柳瀬 典由 東京経済大学, 経営学部, 教授 (50366168)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 企業年金 / 年金資産運用 / リスクシフト |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、市場メカニズムを活用した効率的な企業年金システムの構築可能性を検討するべく、以下の三点を理論的かつ実証的に検討することにある。第一に、母体企業は複数の代替案の中からどのようなインセンティブによって制度選択を行っているのかという論点、第二に、選択された制度の運用、例えば、確定給付型年金制度における資産運用や積立政策に関して、母体企業にどのようなインセンティブが生じているのかという論点、第三に、効率的な企業年金システムを構築するために十分なインセンティブ及び情報のフィードバック・メカニズムを、金融市場は提供しているのか否かという論点である。これらのうち、平成26年度は、主に、第二の論点にかかわる以下の実証分析を進め、柳瀬・後藤 (2015)にその成果を取りまとめた。柳瀬・後藤 (2015)では、2012年5月に公表され、2014年3月期決算に係るディスクロージャーから本格適用となった退職給付に関する新会計基準のもと、新たに開示された年金資産の内訳情報を用いて、母体企業の財務健全性と年金資産運用との関係について、わが国においてリスクシフト仮説が支持されるのかどうかを実証的に検討した。実証分析の結果、母体企業の財務健全性が低い企業ほど、株式比率が高い傾向にあることが確認された。さらに、リスクシフトに対する抑制効果が比較的働きにくいと考えられる、労働組合を結成していない企業群のみを対象にサブサンプル分析を行った結果、年金制度の積立率が低いグループでのみ、母体企業の財務健全性と年金資産運用との関係に強い相関が観察された。以上の結果は、母体企業の財務健全性が低い企業ほど、年金資産運用においては、相対的に高いリスクテイク行動を採用している可能性を示唆するものであり、わが国の年金資産運用の場面における企業のリスクシフトのインセンティブの存在を確認するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で取り組むべき論点は以下の三点である。第一に、母体企業は複数の代替案の中からどのようなインセンティブによって制度選択を行っているのかという論点、第二に、選択された制度の運用、例えば、確定給付型年金制度における資産運用や積立政策に関して、母体企業にどのようなインセンティブが生じているのかという論点、第三に、効率的な企業年金システムを構築するために十分なインセンティブ及び情報のフィードバック・メカニズムを、金融市場は提供しているのか否かという論点である。これらのうち、第一の論点と第三の論点については、平成24年度と平成25年度において、既に複数の査読付学術誌に掲載されており、そのうち1点は国際的にも評価の高い英文の学術誌である。また、その成果は日本経営財務研究学会の学会賞受賞という形でも評価されている。加えて、平成26年度には、残された第二の論点についても、査読付き学術誌に掲載されており、その意味において、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で取り組むべき論点は以下の三点である。第一に、母体企業は複数の代替案の中からどのようなインセンティブによって制度選択を行っているのかという論点、第二に、選択された制度の運用、例えば、確定給付型年金制度における資産運用や積立政策に関して、母体企業にどのようなインセンティブが生じているのかという論点、第三に、効率的な企業年金システムを構築するために十分なインセンティブ及び情報のフィードバック・メカニズムを、金融市場は提供しているのか否かという論点である。これらのうち、第三の論点についてより掘り下げた分析を行い、国際的に高い評価を受けてる学術誌に掲載することを、今後の研究の方向性とする。具体的には、企業年金政策が母体企業の経営者の私的情報を顕示するシグナルであるとする仮説の検討を通じて、企業年金政策に対する株式市場の反応について実証的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも物品の支出が少額となったため、繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品購入は当初の計画よりも多額になる可能性があるため、繰越金をこれに充当する予定である。
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