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2013 年度 実施状況報告書

情報創造過程としての消費者推論に関する包括的・複眼的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24730368
研究機関明治大学

研究代表者

福田 康典  明治大学, 商学部, 准教授 (90386417)

キーワードマーケティング / 消費者推論 / 市場における情報創造 / 価値共創 / プラクティス理論
研究概要

平成25年度は、昨年度考察を行った価値共創フレームを考察のベースメントとしながら、2つの方向に研究を発展させた。1つ目の展開では、オンラインショッピングという具体的な文脈において、消費者(=情報発信者)が発信先となる企業への信頼をどのように推論するのかを実態調査を通じて把握した。口コミ行動などの能動的な情報発信はこれまでの研究でもたびたび議論されてきたが、ここで扱う情報発信は消費者の名前や購買履歴情報などがオンラインショッピングを通じて企業に発信されるいわば受動的な情報発信を指している。こうした情報のずさんな管理や悪用が発信者に不利益をもたらす事象が頻繁に起こっており、発信先企業への信頼を消費者がどのように推論するのかという点は、発信過程の解明において重要な部分である。これについて行った実態調査より、消費者は、発信先企業の情報の扱い方が詳細に描かれているプライバシーポリシーにはほとんど目を通さず、根拠のない社会レベルでのイメージ(例えば、企業なのだからちゃんとしているだろうといったイメージ)や個々の企業の漠然としたイメージで信頼性について推論を展開している点が明らかとなった。
もう1つの展開では、社会的文脈が消費者の情報創造過程に及ぼす影響を解明するための研究視角の構築を試みた。特に、消費社会学や消費文化研究の中で近年注目されている社会的プラクティス理論の適用可能性について、文献研究と概念的な検討を中心に行った。この中で、社会的プラクティス理論が、本研究のさらなる展開に対していくつかのメリット(社会的過程を分析単位に設定できる点、情報創造行為を製品-消費者満足(不満足)-情報創造行為という伝統的な説明原理とは異なる社会的側面から説明できる点、行為の文脈依存性や経路依存性といったものを考慮した分析枠組みの土台を提供している点など)を有している点が確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度の中間研究目標は、いくつかの実態調査と概念的考察を通じて動態性を加味した概念モデルを構築することであった。本年度は、在外研究期間であったため、被験者と直接会って行うタイプの調査(インタビュー調査や非定型型の調査)の実施を見送り、その代わりにアンケート調査票を用いた調査を行うなど、当初の予定から変更した部分もあるが、おおむね順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

平成26年度は、これまでの考察の中で抽出した研究仮説の検証と拡張を行い、研究成果の最終的なまとめを行っていく。具体的には次のような点を中心に研究を進めていく。第一に、プラクティス理論をベースとした研究枠組みの構築をさらに進めていく。まずは、昨年度に行った概念的検討の結果と年度末に行ったアンケート調査の結果をもとにプラクティス理論をベースとした消費者情報創造に関する研究枠組みの構築を図る。そして、そこから研究仮説を抽出し、それに対する経験的データを用いた検証を進めていく。プラクティス理論をマーケティングや消費者行動の研究に応用した既存研究はわずかしか存在していないので、検証方法の確立という点も含め、今後の研究の基盤になりうるような研究枠組みの構築を目指す。
第二に、昨年度行った情報発信の際の信頼推論過程について、その領域を拡張する形でより包括的な検討を進めていく。昨年度の調査では、受動的な情報発信に焦点を絞った検討を行ったが、今回はソーシャルメディア上での発言や発信という文脈に範囲を広げ、そこでのソーシャルメディア企業や他のメディアユーザーに関する信頼推論過程についてアンケート調査の結果をもとに検討を行っていく。
研究費の使用計画としては以下のような使用を予定している;①2つのアンケート調査の実施を予定している。また、プラクティスの時系列変化を把握するために2次データの購入も予定している。②国際学会における報告を予定しているので、その渡航費およびプロシーディングス等のプルーフリーディングなどにかかわる費用の支出を予定している。③プラクティスにかかわる経験的研究の実施に関して、和書および洋書の購入を予定している。

次年度の研究費の使用計画

当該年度では当初、定性的調査の実施を予定していた。しかし、在外研究期間として渡英中で、日本人被験者と直接会ってインタビューを行ったり調査を反復的にアレンジしたりすることが困難であったため、定性的調査をアンケート調査票による一次データの収集と二次データの収集に置き換えて実施した。この変更により、当該年度の助成金使用額に変更が生じた。また、3月以降にインターネットを通じて購入した二次データ等の費用(現金での支払いができなかった分)は、カード会社の利用明細が確定するのが次年度になってしまったため、次年度使用分となった。これも次年度使用額が生じてしまった理由の一つである。
調査形式の変更に伴い生じた分は、次年度、追加調査を実施するために使用する予定である。具体的には、本年度に実施したアンケート調査票を使った調査の結果をもとに、別の製品カテゴリーについて同様の調査を実施し、その結果を比較しながら、消費にかかわるプラクティスの動態性について包括的なデータの収集に努める。また、当初予定していたデルファイ法の代わりに、本年度の調査被験者の一部に対して追跡調査を実施することで、データ観察の時間的継続性を確保する予定である。
カード会社の利用明細については、現時点ですでに提出済みである。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] Social Attitudes of Young People in Japan towards Online Privacy2014

    • 著者名/発表者名
      Kiyoshi Murata, Yohko Orito and Yasunori Fukuta
    • 雑誌名

      Journal of Law, Information and Science

      巻: 23/1 ページ: 137-157

    • DOI

      10.5778/JLIS.2014.23.Murata.1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Do Online Privacy Policies and Seals Affect Corporate Trustworthiness and Reputation?2013

    • 著者名/発表者名
      Yohko Orito, Kiyoshi Murata and Yasunori Fukuta
    • 雑誌名

      International Review of Information Ethics

      巻: 19 ページ: 52-65

    • 査読あり

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公開日: 2015-05-28  

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